花と水

幽山あき

花に水

 ハナとスイは生まれたときから一緒だった。家も隣で学校も同じ大学も同じところを受験して、今も一緒にいる。

 他の人なんていらない。私達二人だけの世界で生きてきた。

 恋人なんていらない、他に友達なんていらない。大人になったらスイと二人で一緒に暮らす。そう決めていた。だってスイは、私がいないと生活すらできないんだから。

 スイもそう思ってくれている。親たちも私達の仲の良さは認めてくれている。スイは、おっちょこちょいで不器用だから一人では何もできない。大学でも私がずっと手伝って生活してきた。

 そんなとき、スイが履修を自分で選びたいと言い始めた。なら私も合わせるって、一緒がいいって言ったのに、全て断られた。


 なんで…?

 その日はスイを待たずに家に帰った。

 夕食も食べず携帯の電源も全て切ってただひたすらに泣いた。明日になったら、明日になれば普通に戻るんでしょ…?

 次の日のスイは普通だった。今までの普通じゃない、自分で準備をして自分で全てこなして、他の友達をつくって。

 二人だけだと思ってたのは、信じてたのは私だけだったの?なんでそんなことするの?

 そんなことがずっと頭をかけまわる。その日の授業も何もかも頭に入らない。食事も喉を通らない。誰の声も聞こえないのに私じゃない人と楽しそうに話すスイの声は、聞こえていた。

 苦しくて耐えられなくて、学校をやめると母親に伝えて部屋にこもった。


 2日、3日学校を休んで母親にも父親にも心配されて、スイのお母さんも来た。それでも部屋の鍵を開けず、昼間は絶対に部屋から出なかった。

 二人だけだと思ってたのは、信じてたのは私だけだったの?なんでそんなことするの?

 そんなことがずっと頭をかけまわる。その日の授業も何もかも頭に入らない。食事も喉を通らない。誰の声も聞こえないのに私じゃない人と楽しそうに話すスイの声は、聞こえていた。

 苦しくて耐えられなくて、学校をやめると母親に伝えて部屋にこもった。


 2日、3日学校を休んで母親にも父親にも心配されて、スイのお母さんも来た。それでも部屋の鍵を開けず、昼間は絶対に部屋から出なかった。

 いつものように深夜にコンビニに出て夕飯を買ってトイレとお風呂だけ済ませて部屋に戻ろうとしていた。

 なぜか、うちのリビングにスイがいた。

「お母さんに入れてもらったよ。ハナのことだから深夜にちゃんと生活はするだろうなって、思って。」

 あまりに普通に喋るスイが憎くて憎くて、悔しくて涙が出てきた。

「裏切り者! 」

 そう叫んで部屋に走った。部屋に入り鍵を締めて、コンビニで買ったものを机に投げる。

 平然としやがって、普通に関わってきて、まるで悪びれもなく。悔しくて悔しくて悔しくて涙が止まらない。

 コンコン

「ねぇハナ」

 私は布団をかぶって聞かないようにする。名前を呼ばれるだけで胸が痛い。

「私は、ハナがいなくても平気なんだよ。」

 うるさい

「いっつもハナがお世話してくれて、ハナが楽しそうだからわたしも楽しかった」

 うるさいうるさい!

「でもさ、ハナは私に、ハナがいないとスイはだめだねって言ってきてたよね。そんなことないよ。私は一人でも…」

 その言葉に枕をドアに投げつけた。

 一瞬言葉に詰まったスイは話し続ける。

「鍵開けてよ」

 向き合う必要がある。わかってる。スイが言いたいことも。

 ガチャ

 扉を開けたら満面の笑みのスイが立っている。

「スイにハナが必要なんじゃなくて、ハナにスイが必要なんじゃない?そうじゃなきゃ、ハナは生きる意味、見失っちゃうじゃん? 」

 わかっていた。スイの面倒を見るから私があった。スイが自立することが怖かった。

「ハナちゃん。これからもハナちゃんのこと必要としてあげる。でも、勘違いしないでね、必要としてるのはあなたの方なのよ」

 最後まで平然とそんなことをいうスイに恐怖を覚えながら、失うことへの恐怖に勝てなかった私は頷く。



 そして私達はずっと一緒にいることになった。

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花と水 幽山あき @akiyuyama

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