伝説の剣


  エクスカリバー


 前世にあったゲームとかでよく出ていた伝説の魔法の剣。

レアアイテムとしてクエストとうでゲットできたはず..............。うちの弟がプレイしていたっけ?「エクスカリバーエクスカリバーエクスカリバー」と叫んでたな。夜中に.......。そのたびに、弟の部屋覗きに行ってそのたびにゆっくりと部屋のドア閉めたっけ。

何か、呪いの言葉のように「エクスカリバー」を唱えていたな。禁断症状とか出てたな。放置したけど..............。


 とまあ、こんなことが前世にあったことを今朝思い出した。この世界には、そういう伝説の魔法の剣とかあるのだろうか?あったら、面白いなぁ~。



※※※




 「師匠~、『エクスカリバー』っていう伝説の剣とかある?」


たまたま、前の日に懐かしい前世の夢をみた私は、その夢で出てきたエクスカリバーについて聞いてみた。

十二歳になった私は、身長も身体も成長した。そして、精神年齢も...........。


 あの後もいろいろあった。今までは、魔法の修行をしていたけど一年前ぐらいから剣の修行も始めている。剣の修行を始めると聞いた時、新しい先生がくるのかと思ったら、教えてくれるのは師匠だった。

イケメンは、何でもできるんだな。私は、またひとつ師匠のことを知ってイケメンについても学んだ。


 「........あるよ。エクスカリバーでしょ?」


 「えっ! あるの!?」


半信半疑だったため、聞いてあるとわかるとワクワクする。

さすが、ファンタジーの世界........あるのか。あの伝説の剣。

みてみたいなぁ~。


 「うん。みたいの? 僕、持ってるよ?」


 「師匠! 持ってるの!!」


何でもないみたいな顔でいう師匠に驚きの表情をみせる。

えっ!!持ってるの? そんな簡単に?

いやでも、この師匠だ。もっていてもおかしくない。


 「見る?」


 「見れるの?」


そんな簡単にエクスカリバーをみることができるの?


 「ちょっと待ってて、今持ってくるから」


そう言って、部屋からでえいった師匠であった。





※※※




 

 「...........えーと、これ?」


 師匠が持ってきたエクスカリバーを見ながら言う。

テーブルの上に寝かせたエクスカリバーは、刃の方がキラキラと輝いている。

が、違和感を感じる私。違和感って言うか、違うな。


 ........これ、エクスカリバーだよね?


もう一回、自分に問いかける。一回目は、声にだし、師匠に聞いた。二回目は、自分の記憶に問いかける。前世のゲームの画面にでていた綺麗でかっこよく、キラキラと光っている伝説の剣。


 「これ...........剣っていうか、バリカン。」


師匠が持って来て、テーブルにおいた、エクスカリバーは、前世のCMとかで見たバリカンだった。持つところは、木っぽくて刃先は、細かく揃えられている。魔力で動く設計らしい。


 「ばりかん? えっと、これがエクス刈リバーだけど...........。」


今何か、エクスカリバーの発音に違和感を感じた。

何だろう? 聞き間違いかな?


 「.........エクスカリバーだよ、ね?」


 「うん。エクス刈リバーだよ。」


 「エクスカリバー...........なんだよね?」


 「エクス刈リバーだよ。」


違和感を確かめるため何回も師匠に問いかける。

...........聞き間違いじゃない。.........私の聞き間違いでは、なかった。師匠の顔を見て、テーブルの上にあるどこからどう見てもバリカンであるエクスカリバーをみる。


 エクス刈リバー。


......................刈るのかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????

切るんじゃなくて、刈るのか!?

エクスカリバーじゃなくて、エクス刈リバーか!!

そうだよね。これどう見ても、バリカンだよね!?

一瞬、私の目が悪くなったのかと思ったよ! 真剣に、最上級治癒魔法使うところだった...........。使っても前と変わらなかったら、魔力を無駄に消費しただけになってしまう。それは、疲れるで嫌だし、突然私が師匠の前で魔法を使って心配されることは避けたい。絶対、私の黒歴史になる。それだけは、ご勘弁である。

........いや待て、これは私の知っているバリカンと一緒なのか? まだ使い方を聞いてない。バリカンと同じ使い方とは限らない。なら、まだバリカンかも断定できないじゃないか。とりあえず、バリカンに見えるエクスカリバーもといエクス刈リバーの使い方を聞こう。


 「使い方は........?」


師匠を真っ直ぐ見て次の言葉をまつ。

一緒なのか? 違うのか?

ドキドキと心臓の鼓動が早くなる。一緒だった場合、私のちょっとした夢は壊れる。ゲームでしか見たことのない伝説の剣、エクスカリバーがこの世界だとバリカンとかものすごくショックである。師匠の口から、バリカン否定をしてほしい。心の中で祈りながら、師匠の次の言葉をまつ。


 「髪の毛を刈るものだよ。」


.........はい!アウトーー!!アウトでした。

バリカン決定である。

バリカンであった。どこからどう見ても触っても、見た目も全てバリカンであったけど、使い方もバリカンであった。


 「...........エクス、刈り、バー。」


 「何か、ショック受けてるね...........。大丈夫?」


私の顔を覗きながら、心配する師匠。手には、いつの間にシューくんがいた。可愛いな。

十歳の頃より一回り大きくなったシューくん。可愛いさもアップしている。


 「大丈夫...........。勝手に私の夢が壊れただけだから........。気にしないで........。」


 「夢が........壊れた!?」


 「壊れた...........。」


 「そうなんだ。」


しばらく長い沈黙が続く。その沈黙に堪えられなくなった師匠が手を叩き、自分に注目を集める。私とシューくんの視線しか集めてないけど........。


 「何...........? 師匠。」


 「うん。そう言えば、この間、町に行った時に買ったお菓子があっただろう?...........食べるかい?」


 先日、町に師匠が何か用事があったらしく、行った時に買ったお菓子を今食べるか聞いてきた。

チラッと見たけど美味しそうなクッキーだった。

そのクッキーを今食べていいと師匠が言ってくれた。

クッキーで私の壊れた夢は、治らない...........。

と、いうわけはなく、簡単に治る。クッキーで私の夢の傷は、簡単に治るのであった。


 「.........食べる........。」


 「よし。じゃあ、食べよっか。」


いつの間にかどこから持ってきたのか手には、クッキーの袋が握られていた。きっと、収納袋に入れていたのだろう。

この世界のエクスカリバーこと、エクス刈リバーをテーブルの端に移動して、棚から丁度いいぐらいのお皿にクッキーを並べた。丸い形のクッキーで表面に崩れたチョコレートが入っている。生地の中にも入っているのだろう。


 テーブルの上にあるクッキーが入ったお皿に手を伸ばして一枚とる。口に持っていき、一口かじる。


 「...........美味しい。これは........。前にも食べたことがある。いつだっけ...........? たしか、三年前に、師匠が持ってきたマドレーヌの味と一緒。」


 「よくわかるね。作った人同じだよ。」


師匠がクッキーを食べながら頷き、飲み込んでから答えた。

やっぱり。

三年前に食べたマドレーヌと同じ味。今回のクッキーも同じ人が作ったのだろう。

手に持っていたクッキーを口に入れる。最後の一口。

美味しい。


 「........彼女........。ですか?」


このイケメンに一切ういた話はない。十二年一緒にいるが、マジで聞いたことがない。世の奥様や若い女性には、モテるのに、だ。一つぐらいあってもいいんじゃないかと思ってるけど本当にないのだ。


 「違うよ。て言うか、リタ。違うってわかっててこの質問してるよね。」


 「うん。師匠こういう話聞かないから...........ね。一つぐらいあってもいいかな~ってね?」


 最初から違うとわかっていたが、何かお約束かなって思ったからね。つい。


 「師匠、モテるのに彼女のかの字も聞かないから..........心配になって........。本当に彼女じゃないの?」


 「僕がモテるのは本当だけど........。彼女は違うよ。」


 師匠、今絶対、世の中でモテない男の敵を作ったね。

このイケメンは、世の中にいる顔に自信がない人へそのモテる顔を少しおそそわけした方がいいと思う。

つくづくそう思う。


 「まあ、それはいいとして。」


 「いいんだ........。」


 「このクッキーと前回のマドレーヌ作った人と師匠は、どういう関係?」


恋愛関係じゃないのなら一体どういう関係だろう?

店で作って売っている感じのクッキーじゃないし........。

う~ん? 誰だろう?

ほのかに、魔力が感じるし........。


 「それは........。秘密だよ。」


しばらく考える様子を見せてから、人差し指を口に当てて秘密と言う師匠。イッケメンだな。この仕草で世の女性、気絶するね。確実に。...........私はしないけど。


 「...........それに、いつか会えるよ。クッキーを作った人には...........必ず。」


意味ありげなせりふに首をかしげながら、クッキーをもう一つつかみ口に入れる。

教えてくれないのか...........。でも、師匠がこう言うということは、いつか会うんだろうな。その人に。


 「楽しみ。」


私は、この美味しいお菓子を作る人に会うのが楽しみになった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る