陽だまりの君と

@koriame26

第1話

春満開になった桜の下をゆっくりと歩いてゆく。

まだ肌寒く、寝起きの体には刺激的だった。まだ寝ていたかったがたまにはこういう日も悪くは無いだろう。

昨日は残業で12時近くまで仕事をしていた。仕事に追われたりすると高校生活での出来事を思い出す笑いながらいつも話しかけてきてくれたたった1人の友人との忙しない日々を。そのことを思い出すと心がフワフワと軽くなる。

それと同時に胸がキュッと軋むように痛くなる。

彼女との思い出を寝起きの頭でぼんやりと思い出しながら歩く。

寂しい気持ちが高まって泣きそうになる。

彼女のことを考えるといつもすぐに泣きそうになってしまう。

まるで涙を溜めるダムがいつも満杯で彼女との思い出がトリガーとなって一気に溢れ出すみたいだ。

だんだんと暗かった街が陽の光によって鮮やかに色づきはじめる。

暗く灰色だった世界がそれぞれの色をより明確にして個々の存在を主張していく。

まるで自分のようだなと考え ふっ と笑みをこぼす。

彼女が最後に残してくれた手紙を思い出す。

こころがじんわりと温まっていく。

いつだってそう。彼女は私に勇気をくれる。私という存在に色を、温度を、感情を教えてくれた。今はもういない最愛の人にそっと声に出して言う。



「ありがとう」

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