キツネの縁結び
来冬 邦子
第1話 ひいおじいちゃんの宝物
ひいおじいちゃんの三回忌に、形見分けをするからと、庭の広い古い家に親族が集まったのは、しきりにジョウビタキの鳴く秋晴れの日曜日だった。
俺のひいおじいちゃんは百十一歳で老衰で亡くなった。骨董品を集めるのが趣味だったそうで、襖を取り払って広くした座敷には壺だのお皿だの掛け軸だのが所狭しと並んでいた。
「一人一つ、好きなのを持って行ってくれ」
最年長の
「知り合いの古物商に見て貰ったが、目も当てられないようなガラクタばかりだそうだ。だから売って小遣いにしようなんて期待しないでくれよ。御自由にお持ち下さいてなもんだ」
崇おじいちゃんは自分の冗談に、ヒッヒとジョウビタキみたいな声で笑った。
すると、うちのがめついかあちゃんが学校の授業みたく片手を上げた。
「崇おじちゃん、うちの子も来てるんだけど権利はあるの?」
「おお、あるとも。子どもにはつまらんものばかりだろうがな。
崇おじいちゃんはまた朗らかに笑った
「では、位置について。用意。ドン!」
三十人くらいのおじいさんやおばあさんや、おじさんやおばさんたちは楽しそうに笑いながら、ひとつひとつ品定めしてゆく。どの顔にも余裕が感じられる。真剣な顔をしているのはうちのかあちゃんとかあちゃんの妹の陽子おばちゃんくらいだ。一緒にいると恥ずかしいから、なるべく離れようと部屋の隅に行って、小さい木箱が十個くらい並んでるのを眺めた。
「赫君。その箱開けてごらん。昔のおもちゃかもしれない。ほら、
優しい
小学生は俺たち二人だけだった。俺たちは一緒にひとつひとつ木箱を開けていった。最初の箱には陶器の杯が入っていた。お酒を飲むとき使うやつだ。
「つまんないね」
「うん」
次の箱は詰め物がしてあった。それを取りのけると赤いガラスに細かな模様を彫り込んだ足つきのコップが二つ出てきた。
「わあ、きれい」
悠希ちゃんの瞳が輝いた。
「いいね。悠希ちゃんはこれにしなよ」
僕は熱心に勧めた。早くしないと飢えたハイエナのような、うちのかあちゃんに奪われてしまう。
「いいの? 赫君は欲しくないの?」
悠希ちゃんは遠慮がちな眼差しで俺の顔を見た。
「全然いらねー」
俺が笑うと悠希ちゃんも笑った。ああ、俺、いま幸せだ。
次の箱を開けようとすると、小さい文字をいっぱい書いた紙がペトリと貼ってあって開けられなかった。
「崇おじいちゃん、このシールみたいの、剥がしていいの?」
「おお、いいぞ。ガンガン剥がしちゃえ」
崇おじいちゃんは他のおじいちゃんと雪舟の掛け軸がどうしたとかの話で大笑いしているところで、こちらを見もしないで言った。
「ちょっと待って。それって封印だとしたら……」
一番若い
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