最終話 くしゃみの正体

 鮫滅隊青梅支部。それは海から遠く離れた山の麓に設置された支部である。一見サメとの縁はなさそうな土地であるが、陸上でも活動できるサメは少なくないため、内陸でも油断はならない。

 三人はこの支部で現地隊士と協力し、鮫辻が隠したとされるサメの調査を行う予定であった。もっとも、その鮫辻の秘蔵兵器は支部への道中で遭遇、撃破してしまったのであるが。


 凪義たち三人が青梅支部の玄関前に到着したのは、日が昇ってからのことであった。


 くしゅん、という音がした。相変わらず、凪義は鼻の調子が悪いようだ。いや、赤くなった鼻を見るに、電車に乗る前よりも酷くなっているようだ。

 ふと、ゼーニッツは支部の敷地内に、やたらと背の高い草本を見つけた。クワに似た葉に、上方向に伸びた緑色の地味な花。それは彼の祖国アメリカで目にしたことのある植物であった。


「あー……もしかしてオオブタクサの花粉じゃないデスか?」


 風媒花……軽くて小さい花粉を風に乗せて大量に飛ばすオオブタクサは、花粉症の原因植物として有名である。見ると、オオブタクサは来た道のあちこちで花をつけていた。

 それを聞いた凪義は、昔に受けたアレルギー検査の結果を思い出した。確か、スギ以外ではブタクサもそこそこ高めの数値が出ていたはずだ。


「……許さない」


 凪義の憤激は、こののっぽな外来雑草に向けられた。朝日に照らされたチェーンソーの刃が、復讐の唸りを上げたのであった。


~Fin~

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鮫滅の鋸 人肉列車編 ミッドナイト・シャーク・トレイン 武州人也 @hagachi-hm

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