第17話 お兄ちゃんはボコボコにされたようです

「あー! おまっ、それ俺のアイテム!」

「違いますー、アイテムは皆のものですぅー」

「「あああああ!!!」」


画面内で雷が鳴った。


「ほら、愛海とレンお兄ちゃんが喧嘩するから罰が当たったんだよ」


一見、仲睦まじくプレイしているように見えるが、俺は違う。《本気マジ》だ……!!

これは絶対に負けられない戦いなのだ……。もし負けなんてしてみろ、愛海になんて言われるか……。

んん? そういえば、さっき俺は夕佳に例の事を言わないでほしいから謝ったよな? なんでこの賭けに持ち越されてるんだ?


あー、俺知ってるぞ、この状況をなんて言うか。


「……『嵌められた』!?」

「え? お兄ちゃんなんて言ったの? ……ああ!!」


愛海がバナナの皮にぶつかって盛大に事故った。


「ふははは! 前方不注意だぞぉ、雑魚め―――うおあ?!」


ああ、崖から落ちてしまったあああああ!!!

雲の妖精に助けてもらい、一命を取り留めたものの、大幅なタイムロスである。


「前方不注意ですよー、お兄さーん」

「なんのぉ!」

「…………」


依然奈菜は上位をキープしている。それゆえか、超無言で運転している。……いや、強くね??? ショートカットとか何食わぬ顔でしてるんだけど。


ほらぁ、また事故ったじゃないか。今度は後方から、黒い弾丸みたいななにかが通過していった。そしてそのまま最下位に転落&フィニッシュ。


「……やった、1位だぁ!!」

「ううう、奈菜ちゃん強すぎるってばー」

「フッフッフッ、まだまだだね、愛美クン」

「……勝てねぇ……いや、まだだ! 諦めたらそこで試合終了だって安◯先生も言っていたじゃないか!」


すると、不意に俺の両肩の上に手がポンッと置かれた。


「諦めて?」

「もう試合は終わったも同然だから」

「いーや、終わってないね、試合は最後までどうなるか分からないものなんだよぉ!」



………………


…………


……



結果……奈菜が2位、愛海は4位、そして俺は…………11位である!! そしてあろうことか、コンピューターが1位をとっているのだ! 敵が悪い! タチが悪すぎる!! ……くそう、コンピューターゆえに文句が言えない……!! これならコンピューターに負けてるってことでこの勝負はチャラになると思ったがそうもいかず、言っても正論で言い返される未来が見えたので言うのをやめた。……チキンとでもなんとでもいいやがれ。くそう。


結局俺はこの勝負に負けた。これはもう腹切りものだな……いや切らないけど。


後から聞いた話なんだが、コンピューターを最強設定にしていたらしい。そりゃあ勝てるわけないでしょう…………。


「じゃあ、約束はちゃんと守ってくれるよね?」

「…………」


なんかここで『YES』と答えたらまるで見に行って欲しいって言ってるみたいで嫌なんだが。


「無言は肯定ととりまーす―――さ、奈菜ちゃん、お兄ちゃんの部屋見に行こう……あれ? 奈菜は?」

「もう居ないぞ」

「え? なんで居ないの? ―――ハッ……!?」



遡ること数分前―――



「ねぇ、もうすぐお兄ちゃんが帰ってくるんだけど……どうにかしてこのゲームに参加させる方法ってあるかなぁ」

「うーん……それなら、言われたら弱い部分を指摘して、それと引き換えにゲームをさせればいいんだよ」

「じゃあ、ゲームに負けたらその弱い部分を攻撃しないで、勝ったら私たちの言うことをなんでも1つ聞かせる様にすればいいのか!」

「そうそう……じゃあ! 今思いついたんだけど、レンお兄ちゃんの部屋を見せてもらうってのはどう??」

「あ! いいね! それ、私も一度も見せてもらったことないんだよねー」

「じゃあ決まり! ならさ、参考までにレンお兄ちゃんの部屋の場所教えてくれない?」

「もちろん!!」




「―――ああ! 裏切られたぁ!!」

「なんだ、どうした、何があった!?」


愛海の突然の豹変に驚く俺。彼女にとって、菜奈の行き先は言わずもがな分かる。

愛海は早速俺の部屋に行こうと立ち上がったが、その瞬間―――


「たんだいまーーー!!!」


玄関から大きな声が響いてきた。

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