第7話 言い訳は無用のようです
「ふーん、小学生の相手をしてたら帰ってくるのが遅くなったんだとねー」
「へー、お兄そんな趣味持ってたんだー」
「……お兄ちゃん?」
お兄ちゃんこと九十九恋は、絶賛説教中である。そしてなぜか幼馴染の白石夕佳といつの間にか帰ってきたクソガキ―――那月もいる。
どうしてこうなったのか、それは数十分前までさかのぼることとなる。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「ただいま……」
俺はスーパーに行って買い物をしたのち、夕佳の家に行こうと思ったが買い物の袋を持ったまま行くのは少しはばかられるのでいったん家に帰ることにした。
「―――お兄ちゃん??」
さっきまで小学生を家まで送り疲れ果てた兄を追い打ちするように表面だけ笑顔を張り付けた状態で怒っている様子の愛海が玄関で出迎える。
「あ、愛海??? なんで怒ってんだよ……? ちゃんと遅れた理由はあってだな―――」
「あ、お兄、帰ってたんだ」
どうしてこの
「あれれ? 修羅場かな?」
ちげぇよ! 普通に違うから!
「『かな?』じゃねえよ! ちょっと助けてくれよ」
「え、いやだよ、そんなことしたら私まで怒られるじゃん」
「なんでだよ、少し口添えするだけでいいから」
「嫌なものはいや、ちょっと地獄に落ちてきたら?」
コイツ……、面白がって言ってるだろ……それどころじゃねえんだよ俺は。
「お兄ちゃん? その理由とやらをちゃんと説明してもらうからね?」
「……はい」
そしてそのまま愛海にリビングへ連行されることとなった。そして那月は後ろでニヤニヤしてやがる。あとで覚えとけよ……? こってり絞ってやる……。
また、夕佳のことをこの時に言おうとは思っていたものの、勢いに負けて言わなかったことをレンはこの後後悔することになる……。
*――――*――――*――――*――――*――――*
リビングの座卓に、俺は座らされている。
「かくかくしかじかで―――うまうまとらとらで―――」
「ふーん、それで?」
「ほんとに申し訳なく思っています」
愛海のうしろでバレない程度に那月が笑っている―――じゃなくて嗤っている、の方が正しいか。この方が悪意がこもってるし。
「あのー、そろそろ解放してくれませんかねー」
「駄目です」
仕方ない、言わなければこの話し合いはきりがない。
「……実はさー、さっき言い忘れたんだけど、待たせてる人がいる―――」
その小さな望みはすぐに消滅することとなる。
―――ピーンポーン。
「はーい」
愛海が立ち上がって玄関に走っていった。よし、このうちに自分の部屋に逃げようか―――
「お姉ちゃん、ちょっとお兄ちゃんが逃げないか様子見ててー」
「はいはーい」
……愛海は俺の心が読めるのか??
「……なあ那月。少し取引をしないか?」
「んー? 聞くだけならタダだよー」
「今度アイスおごってやるから、今のところは見逃してくれないか?」
んー、と深く考える様子を見せた那月だったが、最終的に出した答えは―――
「やっぱ嫌!」
「ちょ……なんでだよ!」
「いやだって、私にとってのメリットがないじゃん?」
「あるじゃないか、アイスが食べれるっていう―――それもあのハー〇ン〇ッツだぜ?」
「はあ……アンタばかぁ?」
コイツ……どこかで聞いたことあるような罵倒を繰り出しよったぞ。
「おまっ、そんなこと言っていいのか?ロン〇ヌスの槍、お前の顔面にぶっさすぞ」
「……アンタばかぁ?妹にセクハラぁ?マジないんですけどー、A〇フィー〇ド全開でそれ折ってやろうか」
と俺の下腹部を指差しながら言ってきやがった。
コイツ勘違いしてやがる……。
「ほう? 俺の下腹部はロン〇ヌスの槍レベルだと?」
「……は、はぁ? やめて、きもいってば!」
その卑猥なネタで盛り上がっていた(?)ため、入ってきた人物に気づけなかった。
「……レン?」
「「あ」」
その時の俺の絶望は計り知れない―――。
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