ハキダメノ世界

門前払 勝無

第1話

 この手も足も頭も髪の毛もゲロから産まれた。


 自分の死を目前にして、過去を振り返り自主的に走馬灯を見る。


 この子はバカだから、余計な事しかしない、単細胞、このクズ野郎ー。


 貴男は悪魔だ。


 風に乗って落ち葉が舞う。無表情で足早に駅に向かう人達の行く先には何があるのか…。

 心の奥に在るものは願いである。願望である。

 金の心配しない生活、無駄な関わりを造らない人間関係、しかし、望みとは裏腹に金が足りなくて訳のわからない輩が近付いてくる。無駄な心配に苛まれて全てが嫌になる。死んでしまえば楽なのだが、ナイフを首に当てる度に天使が現れ、朝陽が包んでくる。しかし、しばらくするとそれも無くなり同じ事の繰り返しである。独りでも金の心配をしない生活、もしくは金は無くても幸せな生活、理想はそれほど高くないと思っているのだが、それすらも叶わないのが現実であり性なのだと悟ってしまった。

 今、首に当ててるナイフに力を入れる。


 惑わされないー。


 死の向こう側はこのハキダメノ世界よりはましなはずである。


 カーテンの隙間からの朝陽の温もりを少し感じながら携帯の電源を切った。


 そして、バイオリンの弓を弾くようにナイフを引いたー。


おわり

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ハキダメノ世界 門前払 勝無 @kaburemono

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