第15話 ピンチ!窮地の王救出部隊




「着きました。開けますよ」


扉を開ける。シーンとして静けさが漂っている。


ここの人たちは先に逃げ延びているのかしら。


この場所はまだ城の美しい白い壁が栄えている。


「この静けさは異常だ。

皆さん気を抜かないでくださいね」


そう言って扉や部屋をひとつづつ確認していく


アーネちゃんどこに行ったの?

どこにいるの?


それにしても誰もいないわ。

昨日はあんなにたくさん人がいたのに。


ゆっくりと扉を開ける。


「またもぬけの殻だ」


「どうなっているんだ? 」


「わかりません。」


「ここの護衛はどうした?」


不思議なくらい誰もいない、そうこうしている内に最後の大部屋にたどり着いた。


「ここが最後ですが、一応注意してください」


部屋という部屋すべてを見たけれど、誰一人いなかった。

こんな事ってあるの?


「開けますよ」


また誰もいないというの?


「こ、これは……」


そこには赤く染まった部屋が姿を現した。


皆ここで殺されている。

兵隊さんも、子供も女の人も。

なんて酷い絵なの。



もしかするとまだ上に上がったのかもしれない。

私たちは急いで来た道を戻り、、また塔の階段を上って次の階の扉を開けた。





上の階は全くの蛻の殻。

人一人、汚れた部屋すらないわ。

ここではだれかが殺された後もない。


アーネちゃん達のお部屋もどこにも争った形跡もないみたい。



私たちはこの階を大声を出して探し回ったけど、誰一人として出てこなかった。



「おい、いたぞ! 」


兵隊さんの声。


もう何人かの敵兵がここまで上がってきていた。

おじさん達は率先して戦闘にでた。


「敵兵です。 ここまで上がって来たようです」


レビンおじさんは剣を抜く。


「お逃げ下さい。

ここまで上がって来る者がいるという事は、こちらも悠長にはしていられないでしょう。


このままでは全滅してしまう。

あなた方だけでも早く脱出を! 」



アーネちゃん達は見つかっていないのに逃げれないわ。

この階は敵兵もいなかったみたいだから細かく調べまわる事が出来たけど。


誰もいないのだとしたら、この階にいた人はいち早く下に降りたのかしら?


レビンおじさん達は上がって来る兵隊たち一行を薙ぎ倒していく。


「ふう、何とか片付いたか。

下でも抑えが利いていないのか」



「兵長! ダメです。屋上にも、こちらの階にも誰もいません。」


上の階を見に行っていた兵隊達が下りて来る。


これで上の階には誰もいないということは分かった。


だったら、尚更、危険だわ。早く出会わないと、もしかたら、今まさに殺されようとしているかもしれない。


「隊長! これは敵兵。

もうここまで上がってきているのですか…」


上に行った階の兵隊達は倒れている敵兵を見て絶望しているようにも見えた。



「急ぎましょう」


レビンおじさんは先導を切って下に降りようとした。



「ここにおられないのであれば、陛下たちはきっとこの下の降りられている。

でしたら、陛下たちが危ない」


「そうですね。 降りましょう

下でまだ戦っているかもしれない」



私たちは急いで来た道を戻ってあの悲惨な光景を見た場所へ降りた。


ここではまだたくさんの悲鳴や怒鳴り声が聞こえてる



私の手を握るお母様の手がとても強く締まる。


どうしたってこの手は離さないと言わんばかりにとても痛かった。


辺りは私たちが居た時よりも火の海になっていた。


「早く探し出さないとまずい」


その通りだった。

お城は頑丈な作りだったからか、木造だけの造りではないからか、崩れ落ちてはきていないが、蒸窯の様に熱い。



私たちを見れば剣を振りかざして来る兵隊達を切り倒しながら王様たちを探し回る。


声が嗄れそうなぐらい私たちは叫んで、皮膚が焼けそうなぐらい、私たちは走り回った。


だけど、どこにもいない、倒れている家具の下にも、ベットの隙間にも。

大きなクローゼットの箱の中にも。


どこ?どこにいるの?待っていて、必ず助け出すから。


私やお母様は必死で辺りを探して、お父様やレビンおじさんは敵兵の相手をする。


「兵長、ダメです、こちらにはいません」


「こちらもです」


「ここも見つかりません」


ぐはっー、


そうして一人、また一人と隙をみせた味方の兵隊は倒れていく。



どこ?どこなのアーネちゃん。



私は熱さを忘れて必死で探し回った。


「危ない、ティターナ! 」


お母様の悲痛な声。

私は必死に探しすぎて、みんなの元から少し離れてしまっていた。


私の後ろには敵兵がいたらしい。

私の後ろで血しぶきが舞いあっがった。



「大丈夫ですか。お嬢ちゃん?」



私の前に一人の兵隊さんが立っていた。


「これは、レビン殿ですか」



「む、あなたは?」



「はっ。

 私は、第12部隊所属 ロハンでございます。」



「12部隊? 12部隊がなぜここに? 」


「はい。

恐れ多くも、我々前線の部隊は壊滅。

燃え上がる城の有様を見て、後退し、こちらの加勢に参った所存です」


「壊滅だと!」


「あれだけいた兵隊たちはどうしたのだ?

下の状況を知っているのだろう! 」


「実は先日他の部隊は別地にて戦場へどうやら薄手になった所を狙われたのかと。

こちらに控えた兵はほとんど兵舎の中で爆風に巻き込まれ朽ちておりました。

それで南方の門が突破。


下は南方から雪崩れこんだ敵の兵でいっぱいですが、我々の残った兵が応戦中。

どうやら松明持った兵が城内に火を放っているようです。


こうなっては王が危ないと、少ない数ですが、北口側からこちらまで駆け上がって来たのです」



「では、外に王は避難していないという事なのだな? 」


「どういうことですか?

城内に王がいるのでは? 」


「それが、お姿が見えないのだ」


「何ですって? 

我々は南から西へ回ってきましたが、王とは一度もお会いしておりません」


「これで決まったな」


「王はまだこの中にいる」


お父様とおじさまは顔を見合わせた。


「王様が危ない。

何としても探し出さないと」


そう、アーネちゃん達もこの中にいるのね。

だったら絶対探し出さないと。



「王様、ど~こだ? 早く探してくれや」


 どこからともなく声が聞こえた。

ロハンという男の連れてきた兵隊さん2人が矢で射抜かれた。


皆が矢の飛んできた先を見ると、いかにも人相の悪そうな、スキン頭の男が沢山の兵隊を侍らせて立っていた。



「どこなんだよ、いるんだろ?この中に王様が。

だったら早く見つけてあげないと」



そういうと男の連れた、後ろの兵達が弓を構える。


「ここはやばい、

みんな後ろへ下がるんだ」


おじさんが叫ぶ。


私たちは死にたくない思いでその場から離れた。



「おいおい、おいかっけこでもするのか?

なら逃げろ。 逃げても逃げ場はないけどな。


なんだ、?お前は逃げないのか?  」



ロハンさん達が前に立ちふさがった


「ここで我々が足止めをします。


必ず、必ず王を助け出してください。

お願いします」




死ぬつもりだ。あの人は、ここで死のうとしている。

まただ。


「すまない」


レビンおじさんはあきらめたようにそう投げかけていた。



早くアーネちゃんたちを見つけないと。


「皆さん口を押えて下さい。

火が強くなっている」


我われはこちらの部屋を探します。


では私たちはこっちを。



「アーネちゃん、アーネちゃんどこなの?

いたら返事をして!」


私は周りの音に負けない以上の声を張り上げてアーネちゃんを呼び続けた。

獄炎の中飾り物が下に落下する。


耐えきれなくなったベットの足は折れて崩れ落ちた。

アーネちゃん……


「アーネちゃーん! 」



私の足元を強くつかむ手が伸びる。


血だらけになった人が必死に私に助けを求めてきていた。



私はあまりの出来事に驚いて尻餅をついてしまった。


その人を助けたいという思いと、でも自分は何もしてあげれないという虚しさと。


ただ一番最初に感じたのはその人の姿を見て恐怖する自分だった。





「みな、さん、逃げて、早く、逃げてください」


あれは、ロハンさん?

良かった生きていたのね。


体には無数の矢がたくさん刺さっている。


右肩を抑え、足を引きずったように、こちらに走って来る。


「ロハン殿! 」


「早く、ここはもう、だめです


奴らが、大量に攻め込ん、できます。

急いで、この場を」



「兵長! こちらから大量の兵が!」


そんな、もう手遅れなの?


「皆さんひと先ず別れましょう。


何とか身を隠し、やり過ごしてください」


おじさんの合図に兵隊さんの何人かのグループと、レビンおじさんの組と私たち家族は塵尻に分かれた。



「大丈夫?ティターナ? 」


お母様がとても優しく一笑したが、とても悲しい一笑だった。

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