第22 錘凪先生の自宅訪問
「なるほど
つまり、君の国では、その一人の王様が皆を統率していた訳か。
そんな場所があるなんて驚きだ」
「うむ。 もしお前も、連れていけるなら、是非案内したいものだ」
「しかし、その穴と言うのは実に興味深いね。
一体何なんだろうか」
「お前、信じてくれるのか? 」
「ん? 実際そこから来たんでしょ?
だったら、それは、事実って事じゃないの? 」
「いや、そうなんだが」
エリィーはこの手の話しを、信じて聞いてくれる人が意外で仕方が無かった。
「とても興味深いね。
もしよかったら、君の世界の事も聞かせてほしいな」
「ほんとうか? 」
――――――――――。
チャイムが鳴る。
「そんなことがあるんだね」
「……私も、行ってみたい」
「あぁ、帰れたら一緒に行こう」
「そん時は僕も誘ってよ」
「もちろんだ」
「ごめんね、長居させてしまったね。
じゃあ出よっか」
「いや、こちらこそ、色々と勉強になったぞ。
ユウカがどんな楽しい事をしているのかと思っていたが、よくわかった」
「あれ? ユウカって、うちのユウカ君の知り合いなのかい? 」
「あっ、まずい……」
「……うん。そう、むぐっ、――――」
「いや、ここの生徒にも似た名前の奴がいるのか?
なんと、それは奇遇だな」
フード少女の口を必死に抑えるエリィー。
「私達は、ユウカ、こ。
そ、そう。 ゆう子という女性にお世話になっていてな」
「へ、へぇ、そうなんだ。
まぁ、女の子が男の子の家にいるわけないよね」
「あぁ、そうだ」
「ふぐ――――。 mfyっ@ks」
「もう、離してあげたら?
苦しそうだよ、その子」
エリィーの腕の中でフード少女は暴れていた。
「おわっ、すまない」
「ところで、彼女の名前はなんていうの?
エリィーちゃんの名前は覚えたけど」
「あぁ、それだったら止めておいた方がいい」
「どうして? 」
「こいつに名前を聞くと、よくわからない事を言いだすんだ。
私たちも聞き取れなくて。
聞くだけ、野暮な事かもしれん。
名前を聞いていおいて、理解してあげられないと、どうも悪い気しかしないしな」
「何て、名前何だい? 教えてくれないか」
「おぉい! 私の話しを聞いてたか!? 」
「……私の名前は……
フラnskfじtシksdsュン」
動くことをしない。 まるで銅像のように1ミリたりとも動かなかった。
「だから言っただろう」
エリィーは言わんこっちゃないと溜息をついた。
「ごめん。もう一度いいかな」
「……私の名前は、フラnskfじtシksdsュン」
「フラン……
なるほど、フランちゃんだね」
「適当か! 」
この先生なら、人が悲しむような事はしないだろうと思っていた。
それが、あまりにも適当に名前を言った為、エリィーはそのギャップに揚げ足を取られていた。
フード少女は嬉しそうに頷いた
「えっ……? あっているのか」
フード少女はエリィーに向かっても頷いた。
とても嬉しそうだ。
「そうか、フランちゃんか
良かったよ。 名前が聞けて」
フランは照れていた。
「え、? どこをどう聞いたらそうなるんだ?
しかも、そんな短くなかったよな。 もっと長く喋ってなかったか。
それ頭文字しかもじってなくないか」
「ふふっ。 先生は耳が良いからね 」
「ま、まぁいい、名前もわかった事だし、こいつもそう言うなら。
ところで、お前は授業はいいのか? 」
「ん? 僕かい? 僕はいいんだよ。
基本的に自由だから。 今日はもう僕は授業をしないから」
「そうなのか。 やはりおまえクラスになると時間を使えるようになるのだな」
「まぁね。
じゃあ、出ようか」
先生は2人の手を繋いで、校門の外まで出た。
「今日ありがとう」
「……ありがとう」
「こっちこそ、僕の相手をしてくれてありがとう。
見ての通り、僕はひまだから、いつでも遊びに来てね」
「良いのか!? 」
「うん。 でも見つかっちゃダメなんでしょ?
そこは自己責任で気を付けなよ。
だったら僕はいつでも大歓迎だよ」
「わかった。
また来る」
「うん。 じゃあね」
先生は2人を見送って学校に帰って行った。
「良い研究対象ができそうだ」
そう笑いに
「ただいま~ 」
「お帰りユウカ」
「……おかえりなさい」
2人は玄関のそばまで迎えに来てくれていた。
「あれ? 何で二人とも玄関の前まで来てるんだ? 」
二人は楽しそうに笑いながら奥へと駆けて行った。
ユウカも部屋に入る。
「何だお前ら。 仲良くまたゲームしてたのか」
「うむ。 相変わらず強いぞこいつは」
「……エリィーが弱いだけ」
「なんだとぉ――」
「おいおい、ほどほどにしとけよ。
ところでお前ら、今日学校とか来てないよな」
二人が冷や汗をかく。
「はい? なんでいきなりそんなこと聞くんだ?
お前の学校だって知らないのに。そんなのあるわけないだろう? なぁフラン。
あれほど、学校に来るなと、家に隔離されてるんだぞ 」
フランは強く首を振りまくった。
「そうか? ならいいんだけど。
俺もお前らを疑ってる訳じゃないけど。
なんか学校中で噂になってたから。
もしかしてと聞いてみただけだ。
まぁ、お前らが危険を冒すような真似するやつじゃないもんな。
ごめん。変な事聞いて。
あまりにもお前らに似ているような噂だったから、ついな」
「はは、それはどんな噂だったんだろうな。
そんなに私たちに似ているなんて。
それに、噂だろ? 色々大きくなっているんじゃないのか」
「それはあるかもな。
なんか金髪の綺麗な髪の子と、黒い服の小学生ぐらいの子だったってさ。
双子の人形みたいな子が学院内をうろついているって噂。
色んな生徒が見たって言い回っててな。
だから、お前らが違うならいいよ。 それで。
お前らじゃなくてよかった」
「え、えっと、えっと、」
「ん? どうした」
「何でもない。 な、」
「……う、うん。 そう」
「そうか。 ところでフランってなんだ? もしかして」
「そ、そうなんだ。 実はこいつの名前が分かったんだ!
フランって言うらしくて」
「へぇ、フランか! 可愛い名前だな。 フラン! 」
フランは嬉しそうに赤面してユウカを見ていた。
か、可愛い。
「よくわかったな。 どうやって分かったんだ? 」
「ぜぇっ? そ、それはだな――」
「ん?」
「何と言うか、心が通じて」
「心が通じた? それも魔力とかいうやつの力なのか?
「そ、そうだな。 そうかもしれん」
「そうなのかフラン? 」
フランは完全に顔をそらしていた。
ピンポ―ン。
家のチャイムが鳴る。
「こんにちわ
おじゃまします」
「誰だ? って言うか勝手に入ってきてないか」
三人は慌てて玄関へ行く。
「えっ? 錘凪先生? 何で
「ユウカ君の姿が見えてね。
ちょっと後ろを追いかけてたんだけど、今日のお礼も兼ねて」
「はぁ? お礼? いいですよ、そんな事。
わざわざ家まで来なくても」
「声かけようとしたんだけど、ユウカ君歩くの速くて、家入っちゃったから。
ほら、美味しい御饅頭も買ってきたんだよ」
「別に家まで来なくても、明日学院で言いえたでしょ。
しかも、あなた友達ですか!? 」
「まぁまぁ、そんな固い事言わない。
明日僕がいるとも限らないんだから――――
あれっ? 君たち?? 何でここに? 」
ユウカは急いで二人を隠すように前に立った。
まずい。 見られてしまった。 っとユウカは必死でこの場を修飾できる様に頭をフル回転させる。
二人も同じだった。
というか会う事が最悪だ。
「ユウカ君とは友達だったのかい? 」
「い、いや、そうなんだ。
あの、その、ゆう子との親戚にあたってだな」
「あ、そうなんだ。 道理でユウカ君と名前が似てるなって、ふっと思っちゃったんだよね」
エリィーはごまかし笑いをしていた。
「え? 先生二人と知り合いなんですか?
つうか、お前らも、いつ知り合ったんだ? 」
どことなくエリィーの様子がおかしくないかと、ユウカは疑問視していた。
「いや、昔にちょっとな。 こっちに来た時に出会っただけだ」
これ以上話があべこべにならない様に、ユウカにだけこっそりとエリィーが伝える。
「えっ? そうだったのか、それは何ともめでたい。
また再開できるなんて僕は嬉しいよ」
ユウカはフランの方を見た。
私を見ないでと言わんばかりに、顔をそらしていた。
「というか、ユウカ君、この穴何なの?
なんかものすごい穴が開いてるんだけど……」
「あ、これは」
「もしかしてユウカ君実はとても危ない人とか? 」
「違いますよ。 これはちょっと色々ありまして」
「そうなの? でもこれ相当厚いと思うけど。
てか、よくドアをぶち抜けたね。
それが不思議で仕方がないよ」
「ちょっとそれは説明すると、結構長くなるので……」
「あっ、もうじきユウカくん家は御飯の時間だったかな? 」
先生は自分の時計を見る。
それじゃ僕はお邪魔だし、ここいらで帰るよ。
お邪魔したね。
それじゃあ。
あ、お饅頭みんなで食べてね」
嵐の様に去っていた。
「何しに来たんだ? あの人」
「さ、さぁ」
錘凪先生はユウカの住むマンションを見ていた。
「やっぱり一緒に住んでいたんですね。
と言いうかこんな良いマンションに住んでいるなんて、ユウカ君という人はは何者なんですかね。
これで二人がいる場所もわかった事ですし、よしとしますか。
なんと興味深い」
「おい、エリィー」
「ふぇっ? 」
「お前、今日本当に学校来てないんだろうな? 」
「え、えっと、 フ、フランは――――」
フランに話を振ろうとしたが、フランの姿は既に無く。
彼女は奥の部屋で話されない様に、ゲームをしていた。
「あいつ、なんて賢い奴なんだ」
「で、どうなんだエリィー。 お前、錘凪先生に今日あっただろ」
「は、はい。 行きました……」
「何で嘘ついた」
「いや、ユ、ユウカが怒ると思って」
「後、ゆう子って誰だ? 」
「それはお前の仮の名前だ」
「俺にそんな名前はねぇ」
「はい。 すいません」
「なんで危険を犯してまで学校に来た? 」
「すいません」
「お前、今の現状をわかってるのか」
「はい、ユウカの仰る通りです」
「フラン! 」
ビックと肩が上がる。
「ちょっと来てくれ。 お前にも大事な事だから知っておいて欲しい」
「……はい。 今行きます」
2人は横に座らされユウカの熱いお灸が据えられた。
「あのな、エリィー。 出歩きたい気持ちは分かるが知られたら、奴らだけじゃないんだ。 この国の組織だって、お前らを捕まえに来る事になる事だってあるんだぞ。
そうしたら、お前らはどんな目に合うか」
「分かっているんだが、だけど、どうしても外に出たくて。
今日は絶好の曇り日よりだったから」
「分かるけど、情報ってのはすぐに出回ってしまうんだぞ。
お前らに何かあったら」
「申し訳なかった。 そこは気を付ける。
だけど、もう少し外出ができる許可をもらえないだろうか?
接触がどれだけ危険な事なのかは承知している。
その上で、見つからない程度にするから。
出れそうな時は外に出てはダメか」
「ダメだ」
「確かに、事件に巻き込まれる事はあるだろう。
だけど、私達には魔力がある。
これは分かる奴にはすぐにわかってしまう。 お互いの気配がわかってしまうからな。
だから泳がしているのかもしれない。 家に居たところで結果は同じなんだ」
「そこは、わかった。 だけどな、俺が言っているのはそいつらの事じゃない。 一番恐ろしいのはこの国の人間に見つかる事だ。
もし、捕獲対象とされてしまえば世界すべてが敵になる。 どこにも逃げ隠れできなくなってしまうんだ。
この家も差し押さえらえたり。 いつどこで何万人、何億人という人間が襲い掛かって連れ去っていくかもわからないんだぞ」
「それは、太刀打ちができないな……。
だが、どうだろう? 以前の私ならば羽やらなんやらが生えていたが、今は見た目は全く人間だ。
これならば力さえ使わなければバレないのではないか?
それに私は日々力が抜けていて、使うと言うほどの魔力はもう無い。 きっと消え去ってしまうのも時間の問題かもしれん。 ここに入れるのも後、いつまでの命か……」
ユウカは表情を曇らせた。 だが、エリィーに降りかかるこの状況を変えてあげる事ができない。
エリィーだって、あといつまでここに居れるのか。現に体の一部であった部分は、色々と消えて行った。
これが魔力が無くなるという事なのだとしたら。彼女は平然な顔をしているが、内心違和感が消えないはずだ。
彼女を救ってあげたい。 それはいつになる?いつ消えてしまうかもしれないその日までだろうか? そんな彼女を縛り付けてしまう事は果たして幸せなのだろうか。正しいのだろうか。 だが、世界からは守れる。 知られない事が一番長く居れる方法だろう。 だが、それは彼女にとってはとて苦痛なのかもしれない。
ユウカだってずっと悩んでいた問題だ。
答えを出さなけらばならない。
「――――――――」
「ダメだ。
とは言いたいけど、そうだよな。 家に居るのは詰まるし、ずっとそう言う訳にも行かないよな」
「では、」
「だけど、ちゃんと自分で管理する事。
晴れた日はダメ。 そこはちゃんと家にいる事。
後出かける日は必ず俺に言うか、言えなかったら、どこに行くか、何時には戻るか、全部置紙を残して出る事。
いいな」
「うむ、 わかった。 ありがとうユウカ」
「……良かった」
2人は大喜びしていた。
「……でも、エリィーは、本当に魔力が少ない。
私があった時よりも弱くなっている気もする」
「フランはこっちに来て、そんな事にはならないのか? 」
ユウカは問うてみた。
「……わからない。 だけど今の所何も感じない。
ただ、最初に来た時はからだが重たくてびっくりしてたけど、もう慣れた」
「こいつと私は種族が違うからな。
もしかするとこいつにはここの環境への耐性があるのかもしれん」
「分かった。 とにかくこれからはそういう事で。
後絶対学校だけは来るなよ」
「そ、それはまた行きたいかな……」
「ダメじゃあい! 」
そんなこんなでユウカ家の今夜の食事もにぎやかに幕を閉じた。
■□■□■□■□ 余話
「なぁユウカ――――」
「ん? どうした? 」
「ここのお饅頭食べてもいいのか? 」
「あぁ、忘れてた。 食べていいぞ。
先生の貰いもんだったよな。 」
「やったぁ――」
「……やったぁ――」
「本当に仲がいいなお前ら」
「な、なんだこのお饅頭は
めちゃくちゃ美味いじゃないか!! 」
「……ふぐっkぁg゛kkしg゛tpgst」
「おい、フラン、食いながらしゃべっちゃわからないぞ。
これ福屋の有名なお饅頭だ。
そりゃ美味いわけだ」
「福屋とはそんふぃ、ふぅごいみふぇなんひゃな」
「おい、お前も真似するんじゃない」
「ふぁあーい」
「しかし、やっぱり上手いなここの饅頭」
「なぁ、文字が書いてあるんだが、何て書いてあるのだ?
文字が小さくて読めない」
エリィーはフランに小さな紙を渡した。
「……私も目がぼやけてよく見えない」
ゲームのやり過ぎである。
「おい、フラン、カエルだ。 カエルを持ってくるのだ」
「……はい。 大丈夫です! 」
ユウカの表情が曇る
「これでよく見る事ができるぞ」
「……エリィー、カエルってどこに置いてあるの? 」
「はい。 大丈夫です! 」
「……カエル、カエルどこ、」
「お前らそれって、まさか科学室に居たのか?! 」
二人は顔を合わせて悪そうな笑みを浮かべる
「うむ」
「……ふふ」
「はい。 大丈夫です!」
「……カエル、カエルはどこ? 」
「お前ら――――
止めろ! 」
この屈辱はしばらく続いた。
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