第21 学校参観 後半 学校の先生はすごい人



「くんくん。

 すごくいい匂いがしないか? 」


「……ハァ ハァ」



「おい! 大丈夫か」


 フード少女は倒れていた。


「……大丈夫、ちょっと疲れただけ

 確かに、いい匂い」



「ちょっと行ってくる

 ぬわっ!」


 エリィーが大体に扱けた。


「ハァ、……ちょっと待って、 」


 フード少女あエリィーのスカートを握りしめていた。


「お、おまえ、相変わらずの馬鹿力だな」


「ハァ、ハァ、……ありがとう」


「褒めてないがな――」


「はぁ、すぅうぅぅぅぅぅ、 ……よし、行こう」


「いやいや、お前無理してないか? 」


「……大丈夫」


「な、ならいいけど」


 向かった先は食堂、学生たちの憩いの場であり、一部戦場でもある。



「何とうまそうなものを食べているんだ。

 ここは兵隊たちの憩いの場か」



「……私、食べたい」



「ちょちょちょ、こらこらこら! ダメだ。

 見つかるだろ」


「……もう、見つかったしいいんじゃない? 」


「ばか、せっかく巻いたのに、お前の努力を無駄にする気か? 」


「はっ!? ……そうだった、 私は頑張った」


「とりあえず、こっそり忍び込んでみよう」


「……だけど、この数。 見つかったら――」


「その時は、お前のスーパーパワーでまた逃げればいいじゃないか」


 フード少女はエリィーを睨め付けた。


「お前も食いたいだろ? 

 行くぞ」



 仕方なく、フード少女はその場に流されていった。



 作戦は無かった。 辺りを見渡してみたが、隠れられるような所もない。

 何より彼女らの身形は目立つ。 それがたとえ机の下に隠れてようとも。


「……これが作戦? なんか意味ないような気がする」



「あれ? この子たち、さっきの小学生じゃね? 」



「あほんとだ。 お前ら何してんの」



 男子学生に見つかった。



「え? 」


 机から引っ張り出された、エリィー達は一気に人を集めた。


「キャー かわいい」


「外国人の女の子よ」


「ねぇ、だから言ったじゃん 私見たって」


「ちょっと、男子のアンタらじゃなくて、女子の私たちに渡しなさいよ」


「何だよ! 鶴橋! 」


「何よ」







「ごめんね黎ちゃん」


「いいよ、見つかってよかったし。

 月も捕まえられたしね」



「っん、」



「ちょっと用事があってね。職員室行ってたんだ。 たぶんもう中庭とかいい場所は取られてると思うから、今日は食堂で食べよ」



「まぁ、俺はそれでいいよ。 

 学食だったら、買い物できるし。 コンビニ行かなくて済むから」


「私も、二人と一緒ならどこでもいいよ! 」


 黎はいつもの明るいテンションで二人に抱き着く


「ちょっと、黎ったら、」


「あれ、どうしたんだろう? 」


 月が、学食の人混みに気づいた。



「なんか人だかり出来てるけど」



「あ、ほんとだ~。 何かあったのかな? 」


「なんだろ? 」




 3人が近づいて行った。



「ん? 金髪のガキ――? 」


 月はいち早く気が付いた。


「あ! 黎たちじゃん」


「あれ~、何かあったのぉ~? 」



「いや、それが見てよ。外人の子でさ。

 もうお人形さんみたいなの」



「え、嘘嘘! どれどれ」



「今だ! 」


「……うん」


 エリィーの掛け声で、フード少女はまた、全速力で走りのけて行った。



「きゃぁっ」


 女子学生の髪が乱れる。


「あれ? 誰もいないよ? 」


「えっ?嘘、なんで? 

 さっきまでいたのに ねぇ? 」



「止まれ! 」


 フード少女は急いで足を止めた。


「……どうしたの? 」



「ここは、あの、静寂なる研究室だ」



 エリィーたちの立っていた場所は理科室だった。


「……おぉ」



「とりあえず、ここなら身を隠せる。 入ろう」


 エリィー達はここを拠点とすることにした。



「しかし、なんと人間の多い事よな」


「……沢山いた」



「お前大丈夫か? 」



「……ちょっと、疲れた。 …休憩」



「すまない。 沢山走らせすぎた。

 暫くここで休もう。

 ここは誰も来ないようだしな」



 フード少女はエリィーを見て、そのまま眠りについた。


「しかしどうしたものか。

 あの警報が鳴ってから、静かだった学校が一斉に警戒態勢に入っている。

 収まるまで待ちたいが、私たちが捕まらない限り、詮索は続きそうだな。

 だとすると、ここも時間の問題か――


 だが、そうだとすると、どこに隠れようものか?

 こいつもしばらくは動けなさそうだし。

 ここで籠城して、機会を見て、脱出するしかないか――」



 エリィーは色々と最善の策を考えていた。


「とにかくこの部屋をもう少し調べるか。

 下手に出て周るのもまずい」



「あれっ? 」


 学校の先生が入ってきてエリィー達と会った。



”しまった。 考えに集中しすぎて 部屋に入ってくる人物に気づけなかった”


「君たち何してるの? 」


「あぁ、えっと」


「えっと、その倒れている子はどうしたの? 」


 フード少女はあまりにもエリィーが酷使しすぎた為、倒れる様に眠っていた。


「あの、その……」


 殺される。 エリィーはそう思った。

 捕まればこのホルマリンに使ってる物体の様に、自分も目の前の男に入れられてしまう。

 エリィーは拳を構えた。



「ちょ、ちょっと待って。 

 別にたたいたりしないから。

 それより君たちは誰なの? 」



「お前だけは必ず守る」


 エリィーは眼鏡をかけた目の前の先生と戦う気でいっぱいだった。







「あっ、もう授業だ」


「えっ、もうそんな時間か? 

 あぁー行きたくねぇ」


「何だよ、課題もちゃんとやって来といて、そんなに嫌か?

 そういや、ユウカあの先生嫌いだって言ってたもんな」


「……ん? 」


「ほら、お前スピリチュアルな事スゲー嫌いじゃん。

 あいつ、やたら、言うもんな。 まぁ、ちょっと変わっているし…… 

 神様だとか、悪魔とか、目に見えない加護があった。 とかさ」



「あ、あぁ、そうだったな」


「まぁ、嫌ってやるなよ。

 信じてるやつだっていっぱい居るんだからよ」



「なぁ、お前はそう言うの信じるか? 

 もし、それに近しい事が自分の身に起こったら」



「んーどうだろうな。 俺も見えたり、そういうたぐいの奴じゃないからわかんねぇけど。

 まぁ、そういう加護とかは聞いて生きてきた訳だし。

 なんで、何かついてることあったらそう思ってみる事にすることは多いかな? 」



「そっか、そうだよな。 実際出会ったやつじゃないといわかんないよな」



「どうしたんだよ、お前。

 お前からそんな質問してくるなんて。

 なんだ、信じ始めるようになったのか?

 断固として、そんな話しは無いなんていなんて言ってたのによ」




「うるせぇ。 さっさと教室行くぞ」


「へぇい、へぇい」







「君たちは外国人かな? 」


「うむ。 そうだな、私たちは違う国から来た」



「そうか。 どうりで、綺麗な髪と目をしている訳だ」


「そ、そうか? ありがとう」



 エリィーと先生はすっかり仲良くなっていた。



「んー それにしても大丈夫かい?

 その子」



「あぁ――、 これは、私のせいでもある。

 少し寝かせてやれば、大丈夫だとおもうが」


「そう、だったらいいけど、ちょっと待ってて、掛け布団取ってくるから」


「すまない」


 先生はそのまま部屋を出て行った。

 外は移動する生徒でいっぱいだ。


「あっ、先生! どこ行くの―」


「おぉ、ちょっと、忘れ物取りに 」


「忘れ物って先生もドジだな

 も授業始まっちゃうよ? 」



「大丈夫。それまでには戻るから」


「じゃあ、先入ってるねー。 先生」




「はーい」



 科学室には何人かの生徒が入り出していた。


「なんだ? だれか入ってきてるぞ」


 エリィーは驚いていた。


 科学室の中には準備室があって、エリィー達はそこにいる。

 ここは、扉の窓がマジックミラーになっていて、向こうからは見え無いが、エリィー達側からは外の景色が見れると言うものだ。

 

 エリィーはそこから科学室を覗いていたのだ。




「なんだ、なんだ、どんどんと人が流れ込んでくるぞ

 これは、包囲網か何かを敷かれているのか? 

 もしかして、あの男、私達を騙して」


 生徒が入っては騒いでいる。

 その内の生徒がだの窓を見た。



「まずい、めちゃくちゃ目があっている。

 これはばれた」



 エリィーはすぐさま頭を引込めたが、声がどんどんと近づいてくる。


 ドアノブが回った。

 ガチャガチャ。



「あれ? 開かないよ? 」

「なに? 閉まってんの? 残念」



「この中、何入っているのか気になってたんだけど」


「そりゃ、あんたみたいな生徒が入らない様に、鍵ぐらいかけてるでしょ」


「えー、何それ。

 でも、あの先生だよ」



「たしかに、あの先生がちゃんと閉めてたのはちょっと驚いたけど」

 

「自分も言う事最低じゃん」


 学生が笑い合っていた。





「はぁ、なんか知らんが、守られたようだな。

 それにしても、何だ? 向こうから、こちらは見えていないのか」


 エリィーはしばらく覗いてみる。

 みるみる、教室は満杯になった。



「あれ? あれはユウカじゃないか? 

 誰かと話しているな

 あ、別れて座った」



 学校のチャイムが鳴り出した。


「これは、あの時の警報。

 やっぱりアイツ、仲間を呼びに行っていたのだ。

 くそ、信じた私が馬鹿だった。

 それでこんなに包囲網を」


 エリィーは急いでフード少女を起こしに行く。


「少し酷だが仕方がない。 起きてもらわないと、捕まってしまう」


 エリィーはフード少女の頬を思いっきりビンタした。

 

 ――起きない。


 さらに往復にビンタをした。


「ダメだ、起きない。

 もう、仕方がない、私が何とかするしか」


 エリィーはもう一度、窓の外の様子を確認する。


 何かが窓に現れた。


「きゃぁぁぁぁぁあぁぁぁ」


 エリィーは驚いて後ろへ倒れこんだ。


 扉がゆっくりと開けられ、その人物は入ってきた。

 



「あれ? 驚いちゃった?

 いやーすまんすまん。 まさかそんな驚いているとは」


「おまえ、何のつもりだ

 急に変な顔が現れて、びっくりしたじゃないか! 」



「ごめんごめん。 はい、これ布団ね」


 先生は優しく布団をかけた。


「あれ、なんかこの子顔赤くない? 」



「いや、気のせいだ」

 エリィーは顔をそむけた。



「ちょっとこれから授業が始まるから、 退屈かも知れないけど、少しここで待っていて。

 終わったら、こっそり逃がしてあげるから」


 優しい笑顔とウインクをして先生は出て行った。


「まだ信じられん。 もしかしたら、私達を出来るだけ安心させて安全に捕えようとしているのかも知れん」


 エリィーはしばらく窓から覗く事にした。

 幸いに、外の声は丸聞こえだ。



 エリィーは話を聞いている内に本当に、ここは学びを教えている場所なんだとわかった。

 これは、教育というやつで、エリィーの世界では、これを、家系の知識多き者が、その勤めを果たしていた。

 それをこんなにいっぺんの数の子に一人が教えてしまうなんて、何と効率的な方法なんだと感心を覚えた。


 これであれば皆が同じ方向を向きやすいのではないかと。


 そんな関心の中、一人の居眠りをしている生徒に注意を向けた。

 こんな素晴らしい時間に居眠りとは何事かと軽薄な目で見ていた。

 それは、ユウカである。




「ス――」



「ごめん。ちょっと横の人、起こしてあげてくるれるかな」


 先生はユウカの隣の人に声をかけた。


 ユウカは起こされて、目が覚めた。


「はい。 大丈夫です! 」

 

 ユウカは体調を聞かれているのだと、勘違いをし、大きく答えた。


「うん。 良かった。 先生は何も聞いていないよ。

 ただ、頭だけは上げててね」



 教室中に笑いが起こる。



「す、すいません」



 ユウカは赤面していた。


 体を起こすと、またユウカは考察をしていた。

 例の事件の事だ。 

 あれからしばらくは何も起こっていなかった。

 特に復讐に来るでもなく、あいつらは何もして来ていない。

 だから、余計に何か企んでいるのではないか? と、少し億劫にもなっていた。

 あいつらの事を考えるたびに左腕の痛みを思い出す。


 やつらだってずっとこのままな訳では無い。 いつ来ても、何かできる様に対策をしておかなければ以前の二の舞になる。


 そして今ユウカの家に泊まっている子。

 あの子について今後どうするかも問題だ。 

 ユウカの家では到底賄いきれなかった。

 食費はあの子が来て2倍以上になった。

 これでは、もう、持たない。 

 だからと言って、誰かに預けるにも、預けれるような人がいなかった。



 なんせ、エリィーと同じ世界から来たという事は、彼女もまた、もしかすると、訳の分からない力を持った組織に狙われてしまうかもしれないからだ。


 優しい星や、忙しい零錠なら、固いし信頼はできるが、命に係わってしまう為、言い出す事ができない。

 

 だからと言って、桂川や、黎たちでは、隠すのに少し荷が重そうだとも思っていた。

 

 後はエリィーの過去だ。 

 色々と神経を使う事が多い。


 そんな事を考えていたら、昨日の疲れからか、ユウカは眠りに入ってしまっていた。



「はい。 じゃあ、寝ているユウカ君! これ解いてみようか」


 ユウカはまた横の生徒に起こされた。


「はい。 ユウカ君、ここの答えは何? 」


 ユウカは自分が当てられたのだと判断するとすぐに、黒板を読み取り、直立した。

 ホワイトボードにはAやらCの文字が書かれており、それについて詳しく説明がされていた。

 先生の指す場所にカエルの絵があった。


「はい。 カエルです」


 生徒たちは笑い出した。


「ユウカ君、カエルで、カエルを拡大してみる事は出来ないよ。

 みんなもね、勘違いしてる人がいたら覚えておいて。

 間違えてもカエルを捕まえても、文字等拡大はできないからね。

 答えは、ルーペだ。 」


 先生がそこに少しスパイスを加える。

 教室中は大爆笑だった。

 

 星にも笑われてしまい、ユウカは恥ずかしさのあまり、下を向いてしまっていた。


 クラスの一人が笑いながら、突っ込みをいれる。


「おまえ、バカだろう。

 カエルで拡大してみるって、どうやって見るんだよ。 やめろって、ほんと想像したら腹痛ぇ」


「ありがとう、ユウカ君、もう座っていいよ。

 皆も笑っているけれど、ユウカ君はみんなの為に貢献してくれたんだからね。

 馬鹿にするのとは違うよ。

 事実これで、今日の僕の授業は、すごく記憶に残るものになったんじゃないかな?

 興味がない人や、記憶がしにくい人でも、今日の学びは、頭に刻まれたでしょ。

 それに、何より楽しく授業を学べる。

 だから、僕はあえて、ユウカ君を当てたんだからね。

 みんなもそこんところはユウカ君に感謝してね。

 ありがとう、ユウカ君。

 でもまぁ、寝るのも本当は良くないんだけどねぇ。

 授業を想い出あるものにしてくれたし、結果オーライってことで」


「分かってるって、先生」


 さっきからかっていた生徒が腹を抱えながら答えた。


 とても穏やかな教室がそこにあった。

 

 ユウカも硬い照れから照れ笑いの表情に変わっていた。



 だから、この先生は変わっていると言われる。

 授業を楽しくする方向へ変へて、みんながちゃんと知識を取り入れるように、場を持って行く。

 そして、絶対に生徒に悪い印象付けをさせなかった。


 必ず彼は、生徒のフォローをした。 今の様に。 

 だから、この先生は変わった行動をしていても、みんなから、許され、愛されていた。


 こうしてチャイムが鳴る。


 授業の終わりの合図だった。


「起立、礼、着席」  


「さぁ、じゃあ今日はもう終わりだから、みんな気をつけて戻りなよ」


 こうして生徒がぞろぞろと教室から出ていった。


 エリィー達のいる部屋の扉が開く。


「お待たせ。 待たせてしまったね」


「先生! お前というやつは

 何とすごい奴なんだ」


「えぇ、? どうしたの急に? 」


「お前はあいつらを束ねているのだろ? 

 とても良い指導者だなと感心していたんだ」


「んー、ちょっと先生と先導者をごっちゃにしてないかい? 

 僕はただの教員であって、誰かを後ろに引きつけようとか洗脳してるわけではないよ? 」


 先生は苦笑いしていた。



「うむ。 そうなのか。

 だけど、あのフォローと言い、アナタはすごい人なのだろう」


「……うん。 とても素敵だった」


「あ、ありがとう。 ってあれ? 君いつから? もう大丈夫なの? 」



「あぁ、丁度、先生が笑いを起こしたあたりからお前の事を見ていたぞ」


 フード少女はこくこくと首を縦に振る。


「そ、そうなんだ。 なんだか恥ずかしいな。

 さっ、とりあえず学校から出ようか」



「うむ。 すまない。 手を患さわせてしまった」


「君、やけに大人っぽい喋り方するよね。 

 いや、大人っぽいと言うか、どこか古臭いニュアンスが入ってくると言うか」



「ん? まぁ、実際に私は大人だからな。

 私の言葉はおかしいか? 」


「いや、おかしくはないけどね

 ちゃんと通じてるから話せてはいるんだけど、

 きっと、歴史好きなご家庭の子なのかもね」


「所でどうすればいいのだ? 

 あの警報が鳴ると、どうやら皆外に出てくるようだが」



「ん? 警報――??  

 あぁ、もしかて学校の鐘の音の事かい? 」


「その鐘の音というやつだ」


「それは”チャイム”って言ってね。

 授業の時間が終わった事を皆に知らせてるだけだよ」


「なんだと? 警報じゃないのか? 」


「警報って、いつからいたかは知らないけど。 そんなに鳴らす必要ないでしょ。

 あれで、全校生徒、同じ行動をとれるように合図しているんだよ」



「ここは何とすごい所なんだ。

 だからこれだけの数なのに統率が履かれているという事なんだな」


「君、なんでそんな言葉知ってるの? 

 すごいね。 めちゃくちゃ賢い子なんじゃ」


「うん? 私は賢いぞ。 

 色んなことを知っているからな。 だが、ここの知識はさほどないが」



 うん、不思議な子だ。 外国の人だから色々言葉を間違えて覚えているんだろうな。

 と先生は流した。


「所でどうやって出るんだ? 」


「そうだね。 今はまずいから、次のチャイムがなってからだね」


「そか。 次のチャイムでは校舎内は静まりかえるという訳だな」


「ん、まぁ、そう言う事だね」


「なるほど、これは私たちを見つけた警報だと思っていたが、そうでなくって良かった」


「さて、じゃあまだ、時間があるから、君たちの事を少し聞かせて。

 実に興味深い話が聞けそうだよ」



「うむ。構わんぞ。 何から話そうか? 」





「ユウカ、最高だったぜぇ」


「また頼むな」


 ユウカの肩を次々叩きながら、生徒が移動していく。



「うるせぇ」


「ユウカ君」


 星だ。


「あ、未来さん」


「ユウカ君今日疲れてるみたいだったね。

 大丈夫? 」



「あぁ、全然大丈夫だよ」


「ユウカ君ってそんな人じゃなかったと思うんだけど。

 最近勉強頑張り過ぎなんじゃない? 

 目元くまができてるよ」


「あぁ、これはちょっと。 頑張りすぎちゃって」


 これが勉強でできたくまでは無いので、やるせない気持ちだった。

 

「あんまり無理しちゃだめだよ」


 優しくて、くしゃっとした顔で笑う姿もとても可愛かった。

 

「あ、うん。ありがとう」


「所で知ってる? この学院に外国の女の子が来てるみたいで、この辺歩き回ってるんだって」



「え? 知らない」


「何かとっても可愛いらしいよ。

 やっぱり外国人だからかな、お人形さんみたいなんだって。 見てみたいよね」


「そ、そうなんだ? でも何でそんな子が? 」



「う―なんでなんだろ? 外人の子連れさんでも来てるのかもしれないね。

 私も、人だかりができてるところにたまたま出くわしただけなんだけどね、もういなくなっちゃってたみたいで」



「そうなんだ。 それは残念だったね」



「おーい、星。 行くよ」


「わ、ちょっと待って。

 それじゃあねぇ」



 星は呼ばれた友達の元へと去っていった。



「外人の女の子? 」


 ユウカはエリィーの事を思い出した。


「まさかな」



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