タカムラさんと行く世界紀行 井戸の中からコンニチハ
奈月沙耶
プロローグ
プロローグ(1)
男の人がいた。まあまあ顔のいい男だ。
色白で面長な輪郭で、すっきりした一重(もしかしたら奥二重?)の涼し気な目元、これまたすっきりした鼻筋。唇は薄いけど他のパーツと比べると大きいかな。
真っ黒な髪はこれまたほどよくすっきりした長さで、前髪は横に流して生真面目そうにおでこを出している。
見る人によってイケメンかどうか意見が分かれそうだけど、わたしは好きな顔だ。
まあまあ顔のいいその男性は、目の覚めるような真っ青なジャンパーを着ている。首元からは白いワイシャツの襟ときっちり締められた赤いネクタイがちらっと見える。
格好だけ見れば、地域貢献の一環である環境美化活動中のため、事務服の上に緑色のジャンパーを着ているわたしと変わらない。が、まあまあ顔のいいその人が立って(たぶん)いる場所が問題だった。
ここはわが社の工場敷地内でも奥まった場所にある建物の裏側。まとめたゴミをステーションへ持っていくのにメイン通路を行かずにショートカットを選んだ結果、わたしは彼に遭遇した。
格好はいくらマトモでも、その人が立って(たぶん)いる場所があからさまにオカシくて、わたしはゴミ袋を片手に固まっていた。
そんなわたしを、まあまあ顔のいいその人が怪訝そうな顔で見る。
いや、なんでアナタの方が不思議そうな顔してわたしを見るんですか? 訝しく思っているのはわたしの方なんですけど。
なにしろ彼は、井戸の中からにょっきりと、お腹のあたりから上を出しているのだから。そこから下は、どう見ても井戸の中ということになる。
でも、それってオカシい。この井戸はポンプもモーターもついていない「井戸!」って感じの古井戸で、もちろん今は使われていないけど埋められてもなかったはずだ。
内部に足場なんてなさそうなのに、どこに立っているのだろう。井戸の縁に手をかけてぶら下がっているというわけでもない。本当に、ふつうに涼し気にそこにいる。
そもそも、いつもはマンホールのフタみたいので覆われているのに、フタはどこいった?
頭の中を疑問符ばかりにしているわたしを見つめ、その人は穏やかに、優しそうに微笑んだ。
「こんにちは。そこのあなた、私が見えているのですね」
どういう意味ですか?
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