第509話 有名冒険者への仲間入り?
王都の冒険者ギルド内、奥の特別室。
半年振りに姿を見せた王国屈指の冒険者達はダンジョンで得たお宝やアイテムの数々をようやく精算すると膨大な額のお金を手にした。
A+ランクの『竜の五徳』、Aランクの『光虎』、同じくAランクの『蒼亀』、B+の『天翔馬』はそれぞれ換金した額をギルド職員に確認するとその三割をタウロに支払う為に机の上にお金の入った革袋を積み上げていく。
「白金貨も混ぜた方が、荷物にならなくていいかしら?」
『蒼亀』の女リーダーが気を利かせるように提案した。
「僕もマジック収納があるので、大丈夫ですよ」
タウロは答えると机の上のお金の山を一瞬で消して見せた。
「魔道具のではなく、能力でマジック収納も持っているのか!増々うちに欲しいな。どうだ、チームごと『光虎』に来ないか?」
「ちょっと!さっき断られたばかりでしょ!」
『蒼亀』の女リーダーがツッコミを入れる。
『天翔馬』のリーダーがそれに同意するように頷いた。
この辺りはダンジョンで半年もの間お互いの命を預けて戦っていた戦友である。
その掛け合いも和やかなものであった。
「それにしても、君達『黒金の翼』は最近B-に上がったばかりなのだろう?名誉子爵になる前はD+だったわけだが……、装備はすでに超一流じゃないのか?鑑定不可だし、その辺りも君らは秘密が多そうだな」
『竜の五徳』のリーダー・カーズは、タウロだけでなくエアリス、ラグーネ、アンク、シオンの装備もすでに確認しているようだ。
「みなさんの装備も凄いじゃないですか。──超一流の冒険者にもなると入手先はやはり特殊なんですか?」
タウロは、自分がほとんど作ったとは言えないから、矛先を変えつつ、気になる質問をした。
この質問は一般の冒険者誰しもが参考にしたい事であろう。
相手は王国屈指の冒険者達だ。
手本としてもその話は貴重であった。
「俺達の装備の入手先は人それぞれだと思うが……。俺達『竜の五徳』の装備のほとんどは今回のダンジョンで入手したアイテムさ。それ以前の装備は王国主催のオークションから、非合法のオークション、有名鍛冶師の元を訪れ直接交渉したオーダーメイドなど、命を預けるものだから、金に糸目をつけずに入手していたかな」
カーズは仲間の装備を何となく確認しながら答えた。
「うちも同じようなものだ。ダンジョンに潜る以前の装備にはかなりお金を掛けていたな。ダンジョンの深層でそれ以上の装備が手に入った時はお金に換算する事も忘れて喜んでいたな。──この鎧、能力が複数付与されているんだぜ?」
『光虎』のリーダーはダンジョンで入手した鎧を自慢気に見せた。
タウロが『真眼』で鑑定してみると、確かに『毒耐性(弱)』『麻痺耐性(弱)』が付与されている。
だが、タウロ達の装備に比べたら正直微妙である。
しかし、よくよく考えると、タウロ達の装備の材料や魔石はほぼ全て竜人族の村のダンジョン「始まりの迷宮」の二百階層よりも深いところに出現する魔物のレアドロップ品ばかりだ。
それを贅沢にタウロが『創造魔法』や、今は滅んでその技術が失われている古代魔法陣技術で生成しているのだから凄いに決まっている。
国内最強とも言われる冒険者達の装備でもタウロ達の装備に及ばない事をこの時初めて確認する事になるのであった。
「……凄いですね」
だからタウロの感想も一言で終わってしまった。
「そうだろ?……って、なんだかリアクション薄くないか?──まあいいや、とにかくダンジョンはお宝の宝庫さ。そんなダンジョンを自由に行き来できるタウロ殿が仲間だったら、かなり有利に攻略が可能になる。だからチームごと仲間になって欲しいんだがな」
『光虎』のリーダーは装備自慢から再度の勧誘に移った。
「しつこい男は嫌われるわよ?──それでタウロ殿、ダンジョン百階層へは一週間後に送り届けてくれるという事でいいのよね?」
『蒼亀』の女リーダーが確認する。
どうやら、タウロのスカウトは諦めたようだ。
「はい。みなさんはその間ゆっくり英気を養って下さい。僕らはちょっとダンジョンに戻ってダンジョン攻略メンバーの『空間転移』がちゃんと作動しているか確認しに行くので一週間後、現地集合でお願いします」
タウロはそう答えると、エアリス達に頷くとギルドの特別室を後にした。
一緒に『竜の五徳』ら、全員も部屋を後にする。
ギルドのロビーには王都の冒険者達を呼び寄せたのかという程、ぎゅうぎゅう詰めに集合していた。
タウロ達ではなく『竜の五徳』ら最強冒険者達を見に集まったのだ。
そして、特別室から出て来たので、歓声が起きた。
「すげぇ!みんな本物だ!」
「カーズさん、サイン下さい!」
「『蒼亀』のみなさん、こっち向いて!」
一般冒険者にとって彼ら上級冒険者は憧れであり、目標である。
そんなチームが四チームもいたら騒がずにはいられないだろう。
そこにタウロ達『黒金の翼』が混ざっているのは滑稽に見えたかもしれないが、『竜の五徳』チーム達が目立ち過ぎて空気扱いだった。
あっという間にタウロ達はギルドの外に押し出される。
「凄い人気だね……、びっくりしたよ」
タウロが改めてカーズ達の人気に驚いた。
話すと気さくだし、威張るところも無くて親近感が湧いていたが、やはり国内屈指の冒険者達である事を再認識した形だ。
「そうね、でも、私達は人気になる為に冒険をしているわけじゃないし、なんだか別世界の人達よね」
エアリスがタウロを理解しているとばかりに答える。
「そうそう。俺達はこの仲間と冒険する事が楽しくやっているんだ。人気はあちらに任せておこうぜ」
とアンク。
「アンクの言う通りだ。私達はタウロと一緒に冒険する事が楽しくて集まった仲間だからな。また、明日から冒険しよう」
とラグーネ。
「ボクもタウロ様と一緒に冒険したくてここにいますよ!」
とシオン。
「うん。何だか自分が急に名誉子爵になってしまったから、凄い人達と並んでいる事にフワフワしちゃったよ。また、地に足を付けて冒険しよう!」
タウロはみんなと「「「「「おー!」」」」」と息を合わせるのであった。
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