第271話 兄妹邸の庭にて実験
防具専門の鍛冶師ランガスに革鎧を譲って貰ったタウロは、お礼をして帰路についた。
そこで、通りを歩きながら『真眼』を使い、早速取得した能力の確認をするのだった。
通りを歩く戦士の竜人族の男性に『気配察知』を使用すると何も感じない。
これは、気配察知に対して阻害系スキルを持っている証拠だ。
竜人族の村では阻害系スキルを持っている者は結構多く、タウロの『気配察知』能力は役に立たない事が多かったのだが、新たな能力『アンチ阻害』が発動して『真眼』を使用して見ると、阻害系スキルを使っている者が強調して映る。
ベルトに擬態しているぺらも阻害系スキル持ちなので、『真眼』を通して見ると、ベルトの輪郭が光って強調して見えた。
「やっぱり、欲しかった能力だ……。『アンチ阻害』は、相手の阻害系スキルをキャンセルしてくれる能力みたいだ。これなら不意打ちに合う確率もグンと下がるぞ」
タウロは喜々として『アンチ阻害』を使用して、『気配察知』で周囲を探ってみると、こちらを窺う竜人族の者が多いのが確認できた。
もちろん、悪い感情を向けているのではなく感謝の気持ちだ、とても快い気配が伝わってくる。
タウロは改めて、竜人族のみんなが自分へこんなにも感謝してくれているのだと感じるのであった。
ドラゴ邸に戻ると、またも庭で今度は、ランガスから譲り受けた革鎧を『真眼』で改めて確認する事にした。
ベヒーモス製革鎧
・ジーロ・シュガーによって魔改造された、元は一流職人ランガスが作った一点物の革鎧。『各種能力上昇』が付与されている。
・秘術により、『体力上昇(強)』『即死耐性(強)』付与。
・骸骨司教の魔石により、『光(聖)属性強化』
「ベヒーモスの潜在能力凄いな……。僕の強化したかった体力が一気に上がるじゃないか。それに『即死耐性(強)』なんて、レア中のレアな気が……。魔石は予想通り光属性強化だったから、これで小剣と弓の攻撃力が上昇する事になるね」
タウロは喜び、革鎧をその場で着込むと、マジック収納から円盾を取り出し、装備する。
するとタウロは庭にある人よりも遥かに大きな岩に歩み寄っていった。
ドラゴはラグーネと同じく『竜騎士』のスキル持ちであるが、もう一つ、『魔法騎士』のスキル持ちで、こちらのスキルアップの為に日頃から魔法について研究し、勉学に励んでいた。
今日もその為にドラゴは自室で、禁忌魔法についての論文を書き上げていた。
ふと庭が見える窓から客人であるタウロが見えた。
何やら防具を装備し始めた。
「何をしているのだろう?」
ドラゴは気になり、窓を開けてタウロに声をかけようとした。
タウロは丁度、庭の大きな岩に近づいて行く。
「何をしておられるの──」
ドラゴが声をかけた時だった。
タウロは、「せーの!」と、気合を入れるとその大きな岩を腰の高さまで持ち上げたのだ。
「え?」
ドラゴが固まっていると、
「流石に重い!──よいしょっと」
タウロは音を上げてその場にまた大きな岩を下ろす。
ずん
大きな岩は鈍い音を立てて、元の場所に戻った。
「……今、岩が持ち上がった気が……。気のせい……か?」
ドラゴは目の前で起きた光景が信じられず、確認の為に庭に出て、改めてタウロに声を掛けるのであった。
「タウロ殿。今のは一体……?」
タウロが防具の付与の力を試していると、ドラゴが部屋から出て来て声を掛けて来た。
「あっ!ドラゴさんすみません。勉強の邪魔をしちゃいましたか?」
タウロは、申し訳なさそうにドラゴに答えた。
「いえ、それはいいのですが、今、この大岩が動いた気がしたのですが……」
ドラゴはまだ、自分の目を疑い大岩に手をかけた。
ふと下を見ると大岩が移動した跡が見える。
やはり自分の見た光景は本当だったのだ。
ドラゴは改めて驚くとタウロに振り返る。
「すみません。実はこの盾に付与されている『腕力上昇(強)』と、この革鎧に付与されている『各種能力上昇』、『体力上昇(強)』を合わせてどのくらい力が発揮できるか試してたところなんです。この大岩は動かせましたがこれが限界ですね。ははは」
タウロは事もなげに防具の付与能力について説明すると笑って見せた。
「いやいやいや……、タウロ殿。今、とんでもない事を言ってますよ?普通、魔道具師が加工した魔石の能力発揮はせいぜい魔石の中程度が限界です。あなたはそれを強まで引き上げているんですよ?それに、『各種能力上昇』ってなんですか!そんな夢の様な付与能力聞いた事がありません!」
「あ、これはドワーフのランガスさんが──」
タウロは革鎧の製作者が製作時に付与した事を説明した。
「あのドワーフ鍛冶師の付与なのですか!?──これは驚いた……。もしかしたら竜人族以上の防具師の才能を持っているのかもしれません。これは今まで以上に優遇する様に族長に一刻も早く知らせないと!」
ドラゴはタウロに一度頭を下げると、走って族長宅に向かうのであった。
「……ドラゴさんが驚くって事はとんでもなかったのか。ランガスさん、お兄さんと同じで凄いドワーフだったんだなぁ」
タウロの魔法陣も凄いものなのだが、その事は微塵にも思わず、ドワーフ兄弟に感心するタウロであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます