第269話 続・兄妹邸の庭にて
ドラゴ邸の庭でラグーネと幾日ぶりかの再会を果たしたタウロは、ぺらの紹介も簡単に、いつかのラグーネの魔槍を渡した時同様、軽い気持ちでマジック収納から前日作った防具品の数々を取り出して渡す事にした。
「こ、これは……!」
ラグーネは自分用にと渡された長方盾を見て驚く。
「ラグーネの親戚だっていう店員さんのお勧めでこの長方盾を買っておいたんだ。これ欲しかったのであってるかい?あ、改造して性能を上げているからラグーネの魔槍と相性は良いはずだよ」
タウロは、笑顔でラグーネ用に改造した性能についても一通り説明した。
「え?鏡面魔亀の盾に魔岩亀の魔石を仕込んだ?タウロちょっと待ってくれないか?この長方盾はそれこそかなり高級なのだが、そこに魔岩亀の魔石を内蔵するとか正気なのか!?あの魔石がいくらすると思っているのだ!」
ラグーネは魔石の価値を知っているのか驚いて指摘した。
あはは…。やっぱり竜人族、魔石の価値は知ってたかぁ。
タウロは笑って誤魔化そうとしたが、ラグーネは渋い表情をしている。
「ごめん。僕のせいで3人には迷惑をかけてるから僕がいない間のお詫びと、僕の代わりの戦力として使って貰いたいんだ」
タウロは昨日の晩から用意していた言葉を言った。
普通には受け取らないかもしれないと、思ったのだ。
「くっ。そう言われると受け取らざるを得ないのか…。だが、タウロ、次からはちゃんと相談して欲しい。この長方盾だけでも金貨5枚もする代物だ。そこに魔岩亀の魔石を加え改造した魔盾など攻略組レベルが持つ代物だから、そう簡単に受け取れる物ではないからな。この盾はここにいる兄上が一番喉から手が出るほど欲しがってた物でもあるし…」
ラグーネがそう言って兄ドラゴを見ると、本当に欲しそうな顔をしている。
どうやら、あの竜騎士武具屋の盾は余程人気がある様だ。
ラグーネの兄ドラゴには後で似た物を作って住まわせて貰っているお礼にプレゼントしよう。
「…うん。急でごめんね。でも、これを受け取って欲しい。それが今の僕に出来る事だから。これでみんなの命を守って欲しいんだ」
そう言うとタウロは頭を下げる。
「…わかった。タウロがいない間、私が二人の盾役として立派に守って見せるよ」
ラグーネは頷くと、一転して嬉しそうに長方盾を手に取って眺める。
「あ、魔力を込めると『範囲防御』が発動するよ、あとはさっきも言った通り、ラグーネの魔槍が土属性付与だからこの盾を装備すると土属性が強化されて攻撃力が増大するよ」
タウロが使用方法について説明する。
ラグーネは言われた通り魔力を込めると半透明の壁が長方盾を中心に展開される。
「おお!」
ラグーネは子供の様に感嘆すると今度は、魔槍を構えて庭にある岩を突く。
すると岩は粉砕され砕けた。
「おお!」
また、ラグーネは感嘆すると無邪気に喜び、おもちゃを与えられた子供の様であった。
「ラグーネ、喜ぶのは良いが、庭の景観を破壊するのは止めてくれ」
兄ドラゴは兄らしく浮かれる妹を注意したが、やはりどこか羨ましそうであった。
「で、ラグーネ。君にはエアリスとアンクにもこの防具類を上手い事言って渡して欲しい」
タウロはお願いすると、エアリス用の改造高級神官服と改造板金胴鎧をラグーネに渡した。
「はっ!?私にその大役を任せるというのかタウロ!二人を納得させて受け取らせる様に上手く私が言えると思うのか!…自分で言ってて情けない。くっ殺せ!」
ラグーネは自分の様に二人が素直に受け取るかわからないので、納得させられるかわからず、いつもの台詞が出るのであった。
「あはは。じゃあ、ラグーネは僕が言った事をそのまま伝えてくれるだけでいいから」
タウロはラグーネの困り果てた顔を見て笑うとそう伝えた。
「…そうか?ではなんと伝えるのだ?」
ラグーネは伝言だけで済みそうなので気が楽になった。
「エアリスには、『ごめんね、今の僕にはこういう事しかできない。この服が僕の代わりだと思って着てくれると助かる』と、伝えて。」
「…そうか、わかった。では、アンクには?」
「アンクには『命を護ってくれてる対価だから』とだけ伝えてくれればいいよ」
「命を護る対価?」
ラグーネはタウロの言葉の意味がわからず聞き返した。
「うん、そう言ってくれれば伝わるはずだから」
「そうか、わかった。他には伝える事はないかい?」
ラグーネは納得するとタウロに伝言を確認する。
「みんなにはとにかく無茶はしないで欲しい。命を第一に行動して。そして僕が戻る場所をよろしくね」
「もちろんだ!二人にはそう伝えるよ。──兄上、今後もこちらにいる間、タウロをよろしくな」
ラグーネをそう答えると『次元回廊』でダンサスの村に戻って行くのであった。
「ぺら、あとの二人にはまだ会えないけど、改めて今度紹介するね」
タウロがそう言うとぺらは跳ねて応じ、すぐにベルトへと擬態するのであった。
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