第248話 宿屋での話し合い

 ダレーダーの街のとある宿屋。


 そのタウロとアンクの泊まる相部屋に一行は集まって話し合いをしていた。


 タウロは一つの案をエアリス達に話した。


「……暗殺ギルドのほとぼりが冷めるまでの間、ラグーネの故郷、竜人族の村にお世話になろうかなと。あそこなら、外の人間が珍しいし、入ってきたらすぐわかるでしょ?それに一応、冒険者ギルドの支部があるらしいし」


「「竜人族の村!?」」


 エアリスとアンクは予想の斜め上の案に驚いた。


「もしかしたら、相手の想像を裏切ってサイーシの街に行くのかと思ったら、竜人族の村なの!?」


 エアリスがとんでもない想像をしていた事を話した。


「それも、凄い案だけど……!竜人族の村は何より普通に行くには遠く、険しく、リスクが大きい場所なんだよねラグーネ?」


「あ、ああ、その通りだ。ここからだと約1か月かけて北の人族の辺境の開拓村に行き、そこから大森林地帯を縦断、アンタス山脈に入り、そこから竜の森を見つけてやっと村に辿り着くという道程だ。以前も話したが脚力に自信がある私でも1か月以上はかかるからな。それに結界や視覚阻害魔法などが村全体にかかっているから、探しても見つけるのは至難の業だぞ」


 急に話を振られたものの、ラグーネは村の秘密であろう事を正直に話した。


「──だそうだから、刺客が竜人族の村まで来る事はないだろうから、そこでお世話になろうかなと。その為にはラグーネに間に入って貰って、竜人族の族長に許可を貰わないといけないけどね。それに実質距離は遠くても一番、みんなと連絡が取り易いでしょ」


「タウロが村に来るのは大歓迎だから、族長の許可はすぐに下りると思うぞ。それに族長もタウロにお願いがあると言っていたからな」


 ラグーネが歓迎の意を示した。


「そう、そのお願いも兼ねて行こうと思うんだ」


 タウロは竜人族の族長リュウガがお願いがあると言っていた事を忘れていなかった。


 ここのところ忙しくしていたので、あの日以来、竜人族の村は訪れていないが、訪問しなければとは思っていたので、このタイミングは丁度良いと思っていたのだ。


「それなら私達も行くわよ。チームなんだから冒険者ギルドがあるところならどこでも行くわ」


 エアリスが当然とばかりに頷く。


「そう言うと思ったけど、族長のお願い通りなら、大変な事になりそうだからエアリス達はエアリス達で別行動の方が良いんじゃないかな?」


 タウロは危険と思われるところにエアリス達を連れて行く事は身も蓋も無いと思ったので否定的な姿勢を示した。


「エアリス、リーダーの言う通りだ。そもそも、暗殺ギルドの襲撃で俺達を巻き込まない様に身を隠すのに、付いて行ったらあっちはもっと危険な事が待ってる気がするぜ?それに、リーダーがチームを抜けて消えたという既成事実を作るには俺達がそのまダンサスの村にいないと意味ないだろ。チームごと消えたらそれこそ暗殺ギルドは俺達4人を血眼になって探す事になる。俺達とリーダーの関係性が切れたと思わせないと、リーダーの心配は尽きない事になる。察してやりな」


「……どのくらいの期間なの?」


 エアリスが不服そうながら、タウロに聞いた。


「そうだなぁ。族長のお願いの内容次第だけど、半年から一年くらい?ダンジョン攻略の進捗にもよるからね。あ、僕は多分、送り迎えをする役目になるだろうから、危険はなるべく避けられると思うよ。それにラグーネはこれまでも頻繁に竜人族の村には帰ってたんだから連絡はすぐつくと思う」


「そうだぞ、エアリス。私にとって故郷はいつでもすぐ戻れるところだからな。何かあればすぐに連絡がつく場所だから、中途半端な場所よりよっぽど近いぞ?」


 ラグーネもエアリスを気遣って助言した。


「折角4人でチームが組める様になって本格始動出来るところだったのに……。わかったわ、私も出来る事をしてみる」


 エアリスは何か思うところがあったのか、タウロの案に納得する事にしたのであった。


 こうして、D-チームとして、本格始動するはずであった『黒金の翼』は、リーダーであるタウロが一時、チームを抜ける事になったのであった。

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