第211話 呪いの石
店内にあった呪殺石に気づいたタウロは、石に近づいた。
「タウロ、それに触ったら駄目よ!?」
とエアリスが止めに入った。
エアリスは鑑定スキルを持っていないから勘なのか何か感じるものがあったのか、タウロに警告した。
エアリスの言葉にラグーネやアンクも反応する。
「どうしたのだ?」
「その石、何か嫌な気配がするな」
二人がそう言うと、リリョウもその石の存在に気づいた。
「初めて見る石だな……。表面は磨かれて綺麗ですが、この石に何か問題でも?」
依頼主のリリョウが不思議そうにして触れようとした。
「だから、その石に触らないで!それは多分、呪殺石よ、対象を呪う為のものだから触ったら呪いを受けるかもしれないわ!」
エアリスはそう言うと、魔法を唱え、お店を覆う結界を張った。
「これで、外からの呪術者の干渉は無くなったはずだけど、その石に込められた呪い自体は消えてないから気を付けて」
「呪いの石なんて……、なんでそんなものがここに!?」
リリョウは驚くと呪殺石を穴が開きそうなほど見つめた。
「とりあえず、僕の『浄化』で呪いを解いてみます」
タウロはそう言うと、すぐに『浄化』を唱えた。
すると呪殺石の表面に少しひびが入った。
「……エアリス、呪いは解けてる?」
タウロはエアリスに確認をした。
「多分、大丈夫よ。でも、部屋の奥からも呪いの残滓を感じるわ。もしかして、リリョウさんのお母さんじゃないの?タウロ、そっちも、呪いを解いてあげて」
リリョウはそれを聞くと慌てて部屋に「母さん!」と呼びながら入って行く。
タウロもそれに続いて入って行く。
そこには、頬がこけて顔色の悪い女性がベッドに横になっていた。
「リリョウ、お帰り……。ごめんね、ちょっと体調が悪くて横になっていたのよ」
母親はそう言うと起きようとしたのでリリョウはそれを止めて寝かした。
リリョウが救いを求めてタウロを見ると、タウロは頷きすぐ、『浄化』を唱える。
エアリスがその光景を後から見ると女性から黒い靄が消えるのを確認した。
「呪いは解けたみたい」
エアリスが言うと、女性の荒かった呼吸も心なしか落ち着いた。
依頼主のリリョウはそれを聞いてほっとした。
タウロとエアリスは、部屋を出ると店内に戻った。
「これは、問題が多そうだね」
タウロはため息交じりに小声でみんなにつぶやく。
「そうね。もしかしたら、急死したっていうお父さんもこのせいかもしれないわ」
エアリスは呪殺石を指さした。
「やれやれ、こりゃ、すぐに帰れる問題じゃなさそうだな」
アンクが状況を察してそう答えた。
「呪いをかけた相手を捕まえないといけないな!」
ラグーネはやる気満々だ。
「そうなるね。まあ、ダンサスの村に引っ越せば呪いの問題は避けられるから、リリョウさんのお母さんは、リリョウさんが付き添って馬車で運んであげた方が良いかもしれない。護衛にはラグーネとアンク、エアリスの三人でお願い。僕は残って、ここにこの後訪れる人をチェックしておくよ」
「おいおいリーダー。一人で大丈夫かよ?」
アンクがそれは困るという顔をした。
「もちろん、みんなは送り届けたらすぐ戻って来てね。僕は滞在するだけだから楽だけど三人は休む暇はないからよろしく」
タウロはそう言うと笑うのだった。
「……タウロ、無茶したら駄目よ?」
エアリスが真剣な顔をして言った。
「もちろん。それに呪いを解けるのは僕だけだし、闇耐性も高いしね。見張るのにも僕が向いてるからベストでしょ?」
「そうだな。リーダーの言う通りだ。俺達は依頼主とその母親を護衛して送り届けるのが仕事だ。今はリーダーの判断に従おう」
アンクが頷くとラグーネもそれに賛同した。
リリョウにその事を伝えると、冒険者とはいえ子供を1人残す事に戸惑った様子だったが、犯人を捕まえる為と言われると納得するしかなかった。
翌日の朝。
母親は一晩寝て体調がかなり良くなっていたので、予定通りダンサスの村に引っ越す事にした。
身の回りの荷物はラグーネのマジック収納で運び、他のものはタウロがあらかじめマジック収納に納め、鑑定後処分する事にした。
幸いこの街にはガーフィッシュ商会の支部がある。
商品は安くなるだろうが買い取って貰えるのではないだろうか。
リリョウの母が言うには、呪殺石は見かけないお客が沢山買い物をした時、割り引いて上げるとお礼にと置いて行ったものらしい。
手掛かりはそれだけだったからもう少し情報は欲しいが、送る途中でエアリス達に聞いて貰う事にした。
「タウロ君、あとはよろしくお願いします」
依頼主のリリョウはそう言うとタウロの手を握った。
「はい、どうなるかはわかりませんが、犯人を捜してみます」
握手を交わすとタウロは一行を送り出すのであった。
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