第195話 Gランク冒険者

 自己紹介した三人はまず、ラグーネの冒険者登録をする事にした。


 なので、森を抜け、ダンサスの村に入ると身体の所々に鱗が生えているラグーネは、すぐに目立った。


「……これはいけないな。特に、蜥蜴人族に勘違いされるのは、心外だ」


 そう言うと、その場で呪文を唱えた。

 すると、ラグーネの肌から鱗が消えていく。


「これで、騒がれる事はないだろう」


「凄い!視界阻害系魔法ね?」


 エアリスが、驚いて指摘した。


「そうだ。私のは初歩的なものだが、角以外は隠せる」


「そうね。角は見えるわ。だから、今度は羊人族系と思われるかも」


「むっ。それはそれで、心外なのだが…。目立たないのであれば仕方ないのか……、くっ殺……」


「ははは。でも、冒険者ギルドでの登録はちゃんと竜人族で申請して下さいね。最初の登録で嘘はトラブルの元なので」


 タウロが、そう言うと、


「もちろんだ。私は竜人族として誇りがあるからな。目立たないなら視覚阻害魔法も使う必要も無いのだが、無用な騒ぎは好まない」


 とラグーネは答えた。


 冒険者ギルドに到着すると、そのまま受付に向かう。

 支部長であるクロエが丁度、受付を手伝っている。


「あら、二人ともお帰りなさい。今日は早いわね。そちらの人は他所からの冒険者かしら?」


 クロエの記憶に無い女性なので、その身なりから他所から来た冒険者と思った様だ。


「この、ラグーネさんの冒険者登録をお願いします」


「え?初めての方?驚いたわ……。身なりや雰囲気からかなり腕が立つ冒険者だと思ったのだけれど」


 クロエはそう答えながらラグーネの手続きを始めた。

 簡単なギルドの規則の説明をしながら、魔道具による鑑定を始めた。


「え?……あなた、竜人族なの…!?」


 普段冷静なクロエが魔道具に表示された鑑定結果に驚くと、個人情報は漏らしてはいけないので周囲に聞かれない様に小声でラグーネに確認した。


「……もちろんだ。訳あってこの度、冒険者になりタウロ殿とエアリス殿に助太刀する事になった、よろしく頼む」


 ラグーネもクロエの小声を真似して小声で返す。


「……じゃあ、『黒金の翼』に所属するのね?わかったわ、そちらも登録しておくわ」


 クロエは頷くと、慣れた動作でささっと手続きを済ませる。


「ではこれが冒険者を証明するあなたのタグよ。紛失したら再発行にお金がかかるから気を付けて。あと盗まれたタグは、悪用できないから安心してね。これは簡単な身分を証明する物だけどそれ用の魔道具に通すとすぐ、本人の持ち物でない事がわかるから。無くさない様に、紐に通して首から掛けておく事をお勧めするわ」


 クロエはそう言って紐と一緒にラグーネに渡した。


「心得た」


 頷くとラグーネは、早速タグを紐に通して首から下げる。


「これで、ラグーネは私達のチームのメンバーね!本当なら仲間と言いたいけど……。早くラグーネから信頼と友情を得て、血の盟約?をして貰わないとね」


 エアリスが、素直に喜んだ。


「じゃあ、早速、Gクエストを三人でやってみようか?」


 タウロは、ラグーネを掲示板の前まで連れて行った。


「普段、クエストはこの掲示板から探して、受付で手続きをして受注するのよ」


 エアリスが、タウロに代わって説明を始めた。


「そして、クエストを完了すれば、受付で手続き後、報酬が貰えるの」


「なるほど、それで、お金を稼ぐのか」


 ラグーネは興味深い……と、納得して頷いた。


「そうよ。今日は私達三人が出来るGランク帯クエストを探して、実際にやりましょう。今から出来そうなのは……、村の周りを囲う為の柵作りかしら?私が、風魔法で伐採して、タウロが加工、ラグーネがマジック収納で運ぶでいいかしら?」


「それも、冒険者の仕事なのか?魔物を倒すだけではないのだな」


「Gクエストは誰でもできるお使いクエストが中心だからね。昇格すると出来る事も増えていくわよ」


「そうなのか?それはまた、興味深いな……」


 ラグーネは頷くと、一緒にGクエストを持って受付に行き、手続きを済ませた。


 三人はすぐ、現場の森の伐採場に着くと早速、現場監督の簡単な説明が始まり仕事分担をして動き出した。


 それからはあっという間であった。


 三人は効率がよく、遅れて始めたにもかかわらずノルマをすぐに超えてしまった。


 ラグーネは楽しそうに作業していたが、声を掛けられると、


「もう、終わりなのか?残念だ」


 と、感想を漏らした。


 現場監督からお礼を言われ、クエスト完了のサインを貰うと、ラグーネは嬉しそうだった。


「冒険者とは人から感謝されて、嬉しく楽しいものだな」


「そうだね。依頼主からの感謝の言葉は確かに嬉しいね」


 ラグーネの言葉に、タウロは冒険者を始めた頃の気持ちを改めて思い出した。


 そして、このラグーネの心根の真っ直ぐさに、改めて仲間として認めて欲しいと思うのだった。

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