第191話 英雄伝説再び…
Cチーム『牙狼』率いる本隊がオーガの群れを正面から必死で押さえ込む中、ボブを中心とするタウロ一行は左翼から、オーガを少しずつだが確実に減らしていった。
ボブの活躍が大きかったので、エリアスも攻撃魔法ではなく、サポート魔法に切り替えてCランク帯の先輩冒険者達を援護する事にしたのだった。
タウロも先輩冒険者達を援護していたのだが、エアリスが援護に切り替えたので、楽になり、弓矢で正確無比にオーガ達の動きを止め、手傷を負わせていった。
最初は仕留めようと急所を狙っていたのだが、オーガ達も案山子ではない。
タウロの高威力の矢を警戒して躱したり、武器で撥ね退け始めた。
「さすが、物理戦闘特化の魔物。そんなに甘くない!」
タウロは、そうなると攻撃方法を切り替えた。
直線的な威力のある光の矢を止め、仲間の背後に回って、自分の姿を隠し、死角から弾道を曲げて攻撃し始めた。
これには、オーガも対応できなくなり、足を、腕を、肩を、太ももを次々と射抜かれ戦闘力が削がれていく、動きが止まったそこにボブ達が斬りかかり倒していった。
ここから、何とか拮抗状態に持ち込んでいる状態だった冒険者側に流れが傾き始めた。
だが、冒険者側も無傷ではない。
特にEランク帯冒険者に重軽傷者が多く、タウロもそちらの治療に回れる状態ではなかったので、後衛の治癒士達はすぐ魔力枯渇で倒れ込む姿が見られた。
当然ながら薬草が多くとれるダンサスの村でも魔力回復ポーションが高価である事には違わないので持っている者は少ない。
タウロはボブ達の援護をしながら、それらが視界に入ったので少し距離があるが、ポーションを遠投して大盤振る舞いした。
能力補正で器用のステータスが群を抜くタウロは、そのポーションの遠投はそれこそ文字通り器用にポーションが入った瓶と瓶を空中でぶつけて割る事で、負傷者達の頭上に中身を降り注ぎ、治療した。
同時にガラスの破片も降り注いだがそれは大目にみて欲しい。
敵に矢を射る傍らで、そんな芸当をするタウロに、背後で見ていたエアリスはびっくりしていたが、すぐにタウロから渡された魔力回復ポーションを飲み干してボブ達の体力上昇の魔法で援護する。
タウロの超人的な支援もあって、本隊の前衛は崩壊せずに維持できた。
その間にボブ達が、左翼のオーガ達を完全に倒して中央に斬り込んでいく。
さすがのオーガの群れもこれで形勢不利になった。
背後から斬られたら為す術がない。
ましてや、ボブの魔刀は切れ味が凄まじく、それを使うボブの腕も相当なものだったので、斬られればすぐ致命傷だった。
こうなると最早、勝負は決定的だった。
数が激減したオーガの群れは一体ずつ囲まれて、討ち取られ、あっという間に全滅するのであった。
勝負がつくと、冒険者達は一斉にへたり込んだ。
勝ったとはいえ、こちら側も体力は限界に近かったのだ。
だが、ボブはへたり込む事なく村に入って行った。
「タウロ、付いて来てくれ!」
ボブの言葉に、タウロとエアリスも付いて行く。
逃げ遅れてオーガの群れに襲われた村人の中に生存者がいるかもしれないと思ったからだ。
タウロがボブとエアリスに希少な上級ポーション、中級ポーションを渡すと、各自散って負傷者を探すのであった。
残念ながら逃げ遅れたほとんどの村人は事切れていた。
だが、ボブが見つけた中には治療が間に合って一命を取り止めた者が二人いた。
まさに奇跡だった。
ボブがタウロから受け取っていた上級ポーションで致命傷を治療する事が出来た。
すぐにタウロも駆けつけて、追加のポーションで治療する。
エアリスも治癒魔法と体力上昇魔法で補助した。
その中の一人がその村の村長であった。
最後まで村人達の為に踏み止まり抵抗していたらしく、冒険者が到着して戦いに突入した事で、止めを刺されずに済んでいた様だ。
怪我から意識を取り戻すと、ボブに助けられた事をとても感謝した。
名前を聞けば近隣の村でも有名なダンサスの英雄と知って村長はとても感動し、感謝するのであった。
終わってみれば、ボブが圧倒的にオーガの群れを多く仕留めていた。
魔刀の切れ味もあるのだろうが、それでも大活躍したのは確かで、他の冒険者達もボブが居なければ絶望的だったかもしれないと口々に評価した。
「いや、みんなが弱らせてくれたから俺は止めを刺していただけだ」
とボブ本人は、謙遜していたが、それがまた、みんなの評価に一役買った。
タウロもボブを間近で見ていた証人の一人としてその活躍ぶりを讃えて花を添えた。
「ボブさんの活躍が無かったら、僕達も最後はやられていたと思います」
「よせよタウロ。お前が後衛で頑張ってくれたおかげで助かった奴も多いと思うぞ?」
ボブは、この頼もしい少年の活躍もみんなに知って欲しかったのだが、それもまたボブの優しい心遣いとみんなには映った様だった。
こうしてボブの英雄伝説にまた一つ、偉大な活躍の物語が追加される事になったのだった。
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