第137話 山村の今後

 食事会の翌日。


 リーダは、朝から、ホクホク顔だった。

 昨晩、この村の村長と独占契約を結んだのだ。


 これでリーダは、マヨネーズの生産拠点を確保した。

 今後のトメートやトモローの出荷も、マーチェス商会が引き受ける約束になっていた。

 タウロが言っていた、マスタードなる調味料もマヨネーズ同様、美味しいらしいので今後も期待が持てる。

 ジャガモー料理は、山村側とマーチェス商会側とで話し合い、オサーカスの街に山村の生産物専門の出店を出せないか模索していく予定だ。


 フライドポテトと、マヨネーズをたっぷり付けた蒸かしジャガモーは、場所があれば調理が簡単で売れそうだからだ。


 タウロが言うには、ジャガモーではインパクトが弱いので爆裂種のトモローが生産出来る様になったら良い料理を教えてくれるそうだ。

 爆裂種とはトモローの品種の一つらしく、危険そうな品種だが、調理すればそれが客引きに丁度いいらしく、商品名は『ポップコーン』と言うそうだ、想像がつかない。


 とにかく、マーチェス商会の利益に繋がりそうなので、マーチェス代表に早く報告したいが、昼までは山村に滞在しないといけない。

 午前中はタウロが、村人達に栽培方法を指導するからだ。

 契約も出来たし、昼まではゆっくり過ごす事にしよう。




 タウロは村人達に肝心のジャガモーの育て方について、注意深く教えていた。

 ジャガモーは比較的に栽培は簡単で狭い場所でも育てやすいのだが、連作はできない野菜なのだ。

 一度じゃがいもを植えたら同じ場所での栽培は三年は空けた方がいいので四か所場所を用意して代わる代わる作るとよいとアドバイスした。


 ジャガモーは年に二回収穫が出来るし、水もほとんどいらず、追肥と間引きさえすれば勝手に育ってくれる。


 初心者に近い山村の者にも楽に作れるはずだ。


 トメートは日当たりが良いところが良いので斜面で育てる事を勧めた。

 高地なので天敵である多湿とは縁遠いのもいい。

 栽培出来たら、トメートソース作りをする事を勧めた。


 トモローはトメート同様日当たりが良い場所で、肥料を多く吸収する作物なので、畑の中の余分な肥料も吸い取り、土を綺麗にしてくれる特徴がある。

 連作にも向いているので間引きと追肥に気を付ければ、同じ畑で育てる事が出来る事を教えるのだった。


 教えると、村人達はすぐに種まきを始めた。

 訪れた日と比べ、生き生きとした表情を浮かべて作業する村人達にタウロは大丈夫そうだと安堵するのであった。



 タウロが貸し出したお金の返済はマーチェス商会を通して収穫後から徐々に支払っていく事で話はついた。

 マヨネーズはすぐ生産できるのですぐ利益が出そうだが、収穫までの貴重な収入源であったし、山シャモをもっと飼って増やす為にも出費は嵩むだろうから、待つ事にした。

 それどころか、山モーモーも増やしチーズやバターを大量生産した方がいいと思ったタウロはさらに投資するという事でマジック収納からお金の入った革袋を一つ出して、村長に渡した。


「こんなにいいのですか!?」


 村長はその重さに驚いた。


「投資ですから。先に渡したものと合わせて、使用内容についてはマーチェス商会に相談しながら有意義に使って下さいね。山村の立て直し頑張って下さい」



 エアリスは側でタウロの様子を窺っていたが、タウロのお金がどこから出ているのか不思議だった。

『冷蔵庫』などを売った収入もあるのだろうが、ポンポンとお金が出てくる。

 他にも何か収益があるようで、冒険者ギルドでも、お金を引き落としているのを見た事があった。


 ギルド相手の商売と言えば、『憩い亭』のお味噌作りくらいしか思いつかないが、あの収益は微々たるものだろう。

 以前いたという街で何か商売をしていたのかもしれないが、そこまでは聞いていなかった。




「タウロって何者なの?」


 タウロがエアリスに出発する準備しようかと声をかけると、そういう返答が帰ってきた。


「うん?以前聞かれた時、答えたじゃない。小さい時に母は亡くなり、暴力をふるう父から逃げて街に行って八歳で冒険者になったって」


「それは聞いたけど……」


 タウロはリバーシの製作者である事はエアリスには言っていない。

 それを話すと、ややこしい事になるからだ。

 名義を貸してくれている冒険者のモーブにも迷惑がかかるし、間を取り持ってくれた冒険者ギルドサイーシ支部長レオにも関わってくる。

 納得のいかなさそうなエアリスを納得させる為にある事実を告げた。


「ここだけの話……、前の街に僕がオーナーのお店があるんだ」


 タウロがまだ言ってなかった情報だった。


「え?どういう事!?」


 カレーという食べ物の専門店をサイーシの街でギルドの管理で運営している事を話すとエアリスは驚きつつ納得してくれるのだった。

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