第136話 グリフォン討伐の後

 タウロはグリフォンの死骸を回収すると、森に張った縄を外し始めた。


「縄は必要なかったわね」


 エアリスが、タウロをからかう様に言った。


「うん、本当は先制攻撃で仕留めてれば終わりだったんだけど……、これは最後の時間稼ぎだったからね。エアリスのおかげで、助かったよ。これが活躍する時はこちらの命が危うい時だったから」


 タウロが答えていると、離れて様子を伺っていた猟師がやってきた。


「……もう、大丈夫かい?」


 木の影からこちらを見て確認し、上空を何度も見上げて確認しながら、聞いてきた。


「あ、もう、大丈夫ですよ。良かったら、張った縄を外すの手伝って貰えますか?」


「お、おう!わかった!」


 猟師は木登りは慣れたもので、するすると登ると縄を外していくのだった。




 グリフォンの巣には、タウロが放った矢に射抜かれて絶命したグリフォンが一頭と、食べかけの灰色六足熊の死骸があった。


「ひえー。魔物も恐れる灰色六足熊もグリフォンには餌なのか!」


 猟師は改めてグリフォンという魔物がどんなに獰猛で危険かを知ったのだった。


 タウロはグリフォンをマジック収納に回収すると周囲を見渡した。

 グリフォンがつがいだったので卵があるかもと思ったのだが、産む前だった様だ。


 あと、グリフォンの知識として、タウロにはもう一つ気になってた事があった。


 それは、グリフォンが黄金など輝くものが好きというものだった。

 なので、巣に何かあるかもと思ったのだ。


 巣の枝をマジック収納で回収してみるとその後には……、何もなかった。


「そんなに甘くないか……」


 タウロは残念がったが、エアリスは期待してなかった様で、


「その情報、多分嘘よ?もし、事実だったらグリフォン討伐を嫌がる冒険者がいるわけないじゃない。多分、クエストをやらせる為にギルドが流したのかもね」


 と、バッサリとタウロの淡い期待を叩き切った。


 確かに……、ギルドの書庫で知った情報だったからなぁ。今度からは著作者も覚えておこう……。


 タウロは、現実をまた一つ学ぶのだった。



 タウロ達が山村に戻る頃には夕方に差し掛かっていた。


 シンとルメヤは、家の修繕でまだトンカチを振るっていて、その音が村中に響いていた。


「お?タウロ、エアリス、お帰り!で、どこ行ってたの?」


 屋根の上からシンが、タウロ達を見下ろしながら聞いてきた。


「獲物を獲ってきたから、調理するね」


 タウロがシンに答えると、


「マジか!じゃあ、頼んだぜ!」


 向かいの家の裏からルメヤが、タウロの言葉に反応して出てきた。


 タウロはすぐに仕込みの為にグリフォンを村長宅の庭にマジック収納から出すと、村人達からどよめきが上がったが、かまわず血抜きをし、羽根を毟ると捌き始めた。

 一人では時間がかかるので数人がかりだ。

 猟師達が参加してくれたので意外に時間をかけずに捌けた。


 上半身のお肉は小さくカットし、塩コショウで下味つけ溶き卵を満遍なく付けると米粉をまぶし、油で揚げる。

 するとグリフォンの唐揚げの完成だ。


 さらに、下半身のお肉は薄くスライスして塩コショウで味付けし、フライパンで火を通す、それを炊いたお米の上に肉汁と共に乗せたら、グリフォン肉丼も完成だ。


 こんな異なるお肉の料理が出来るのは、グリフォンの上半身と下半身がそれぞれ別個の鷲とライオンから出来ているからだ。


 タウロとしてはもっと、品目を増やしたかったが、村人の分を作るとなると時間がかかるので、この二品目で妥協する事にした。


 タウロの手際を見て村の主婦達がすぐにマネして作業に移った。


 子供達は調理のいい匂いと音にヨダレを啜りながらお腹を空かせ、男達は貯蔵室に残してあったお酒を出してきて、それを飲みながら完成を心待ちにした。


 みんなの分の料理が出来る頃には、日は暮れて村長宅の庭は、タウロの光の精霊魔法の『照明』で照らされていた。


 タウロが、食べたがっているみんなを代表して音頭をとると、この世界には無い文化である『イタダキマス』をみんなに教え、全員で手を合わせて唱えて貰うと食事にするのであった。


 料理は大好評だった。

 お肉が何より美味しい事が一番だったが、揚げ物をフライドポテトで知ったばかりの村人達にとってこの唐揚げは衝撃だった様だ。

 村長宅の庭での食事会は大絶賛の中、深夜まで続くのであった。

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