第121話 冒険者ギルドの夜
冒険者ギルドオサーカス支部のロビー。
そこは本当に広く、ホールになっていて酒場も併設されていた。
この時間、冒険者達が大勢その酒場で飲み始めていた。
受付は酒場の部分とは低い壁で仕切られていて右半分が受付、左半分が酒場という感じだった。
出入り口もその為二か所あるが、室内からどちらも移動できる構造になっていた。
なので酒場の騒ぎ声も受付側に筒抜けだったがこの支部の人間は慣れている様で気に留める者はいなかった。
「大きなところは経験あるけど、ここはその中で一番騒がしいかも」
エアリスがこの喧騒にうんざりしながらタウロに漏らした。
「さっさと報告して宿屋を取ろう」
エアリスに頷くとタウロはいくつも並ぶ受付から空いてる所に入ると報告した。
「ダンサスの村からここまでの護衛クエストですね、確認しました。……こちらが報酬になります。数日後もここからダンサス村までの護衛クエストも予定通り受けますか?」
薄い箱型の魔道具から表示されるデータを見ながら受付嬢が聞いた。
「はい、お願いします」
タウロがそれに頷いた。
「わかりました。チーム『黒金の翼』の護衛クエストの受注を確認しました」
タウロ達が受付で報告とクエストの受注をしているとこの四人の組み合わせを奇異に感じたオサーカスの冒険者達がいた。
「子供が二人もいるチームなんてうちの支部におったんか?」
「あの親子冒険者チーム『家族鷹』でも子供は一人だったやろ?」
「という事はよそ者かいな?」
「出来立ての初心者チームちゃうん?」
オサーカスの訛りが強い冒険者達はタウロ達に聞こえる声で憶測を言い合った。
「……なんか酒の肴にされそうだから早く出ようか」
受付嬢から宿屋を紹介して貰うと、タウロが仲間に提案した。
エアリス達は即座に頷き、ギルドを出る事にした。
「待ちぃやあんたら。少し話しようや。お?このチーム、Eランク帯のタグ付けとるわ!素人ちゃうぞ!」
タウロ達を呼び止めた地元冒険者が、四人のタグを確認して驚いた。
「おお!?出来立てのチームちゃうんかい!」
「凄いやんお前ら!ちょっとこっちで酒飲もうや!」
「子供に呑まそうとすな!」
地元冒険者達が地元のノリとお酒の勢いで絡んでくる。
「ありがたいですが、長旅でみんな疲れてるんで今日は失礼します」
タウロが丁寧に答えると、
「なんや、君がリーダーかいな?しっかりした子やん。どこから来たん?」
「ダレーダー伯爵領のダンサス村から来ました」
これは少し情報を与えないと離して貰えないと思ったタウロは答える事にした。
「ダレーダー?結構な田舎から来とるのー。やっぱり人手不足でポンポン昇格させられた口かい?」
悪気はなさそうだが、かなり失礼な事を言ってきた。
何でもオサーカス支部では冒険者が不足気味らしい。
その為、今は昇格が比較的に早く、Eランク帯になるのは簡単なようだ。
「ここは依頼が多いから仕事は選び放題で楽しいからなー。明日からここでやっていくんなら、楽しみにしとき―」
「あ、いえ、護衛クエストで一時的に来てるだけなので」
「なんや、そうなんかいな!それにしても子供チームに護衛依頼する奴とかどれだけケチってんねんって話やな」
地元冒険者は憤慨してみせたがこれもまたタウロ達には失礼な話だった。
エアリスがイライラし始めた為、タウロは不味いと思い、
「仲間も疲れてるみたいなので、今日はこれで」
というと、エアリスの背中を押してギルドから退散するのだった。
「何あいつら!デリカシー無いの!?失礼すぎて腹が立つわ!」
宿屋に向かう道すがら、エアリスは不満を露わにした。
「まあまあ。悪気はなさそうだったから……」
タウロは前世の関西出身の同級生がずけずけとものを言うのを見ていた記憶があったのでそれが重なり、この街の文化かもしれないとエアリスを落ち着かせた。
「あそこまではっきり言われると、俺はわかり易くて逆に楽だけどな」
ルメヤは、悪感情は涌かなかった様だ。
「ちょっとずけずけと入ってくる感じは確かにちょっと引くけど、楽な人には楽かもな」
シンも驚きはあったが、悪い印象は持たなかった様だ。
「僕は以前にああいう人に会った事あるから慣れてるけど、初めての人は驚くだろうね」
エアリスの気持ちを汲んであげつつ、今後の為にもエアリスに理解を求めるタウロであった。
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