第85話 Fランクの立ち回り

 薬草採取を教えながらエアリスになぜこの村に来たのかタウロは聞いてみた。

 帰ってきた答えは意外に考えられたものだった。

 それは、後衛職として極めるのにアイテムの重要性を考えたらしい。

『神官』として、治癒系魔法、『魔法使い』としての攻撃魔法を使うにも、『結界師』の防御系魔法を使うにもタイムラグや、魔力切れがあり、その弱点を埋めれるものが薬草やポーションなどのアイテム類という答えに行きついた。


 そこでダンサスの村が薬草類が豊富でそういうクエストも多いと聞いて、Fランクの内に詳しくなっておこうと、こちらに来たそうだ。


 確かにこの村は色んな薬草が多い。

 タウロもこの村で新たな薬草を知り、ポーション類も複数の種類を作れるようになった。


 タウロは、基本ステータスが子供のそれなので、立ち回りで補う様にしている。

 その中でポーション系の使用が重要になってくる事を経験で理解してるつもりだった。

 なのでエアリスに共感する部分は多い。

 高圧的で頭が悪そうだと思ったのだが、ちゃんと考えているのでしっかり教える気になった。




 エアリスはこの少年の薬草の詳しさに舌を巻いていた。

 自分も一応、本などを読んで予習してきてたのだが、この少年はその上を行っていた。

 基本の見つけ方、見間違えやすいもの、群生地、再度生えてくる期間などは、クエストで役に立つ。

 それとは別に調合する種類や、配合で効果が変わるもの、調合のやり方、コツ、入れる順番で効果が変わる薬草など、熟練の薬剤師としか思えない知識も持っている。

 本人は本で学んであとは応用と、独学だという。

 スキルが文字化けスキルしかないという事を信じるなら、自力のみでここまで研鑽を積み重ねたというのは驚異的だった。


 ましてや、その自分の努力で得たものを、惜しげも無く他者にも教えてくれている事に、何か器の差を見せつけられた様で自分が負けた気がした。


 こうなったら、この後のコボルト退治で私の価値をみせつけるしかない!


 と、意気込むエアリスだった。




「ルメヤさん『挑発』でタゲ取り!」


「了解!『かかって来い、コボルト共!』」


 ルメヤの『盾使い』スキルの能力『挑発』で標的をルメヤに集中するコボルトに、側面から切り込むシン。


 タウロは盾で敵の攻撃を防ぐルメヤに耐久上昇ポーションを投げ、シンに腕力上昇ポーションを、そして、二人の合間から『精密』を使った弓矢を放ってコボルトを仕留める。


 三人の連携は見事だった。


 日頃から敵を想定した特訓もしていたのでスムーズだった。


 その反面、エアリスは攻撃魔法を使う暇も無く、戦闘に入ったので白兵戦になると、精度がまだ低いエアリスの攻撃魔法では味方に当てる可能性もあるので使えない。

 なので支援魔法を使おうと思ったが、タウロにポーションで先を越された。


 エアリスは何もできないまま、コボルト退治は短時間で終了した。


「ごめんね。今回は三人での立ち回りを試したかったから」


 タウロはエアリスに謝った。

 エアリスが魔法を使おうとしてるのはわき目に気づいていたが、何を使うのか、タイミングはどうなのか、効果は?それらを待って確認するわけにもいかないので、三人での立ち回りを優先した。


「……あなた達は、日頃から一緒にチームを組んで魔物と戦ってるのね。見事な連携プレイだったわ」


 エアリスは素直に褒めた、入り込む余地が自分にはなかった。


「うん?俺達が一緒に戦ったのは今日が初めてだぜ?タウロ君から教わった戦術だけどな」


「そうだよ。初めてだから、緊張したけど上手くいったな」


 ルメヤとシンはハイタッチする。


 初めてであの連携度なの!?エアリスは驚いた。


 自分はFランクだが、上のランクのチームに入れて貰って、戦闘経験は重ねている。

 だから、適応力はある方だと自負していたし、認められてもいたのだが、この三人は初めてで自分が入ってるチームより優れた立ち回りをしていた。


 それも、タウロから教わったというのだから、この少年は一体何者なのだろう?

 エアリスは、この少年に強い好奇心を抱いたのだった。

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