第35話 タウロのステータス
宰相との対戦後は、宰相の進行で観戦していた貴族達が席に付き各々で対戦を始め、タウロが各席を形ばかりのアドバイスをして回った。
リバーシは娯楽だ、楽しんで打てればいいだろう。
と、タウロは思ったのだ、間違ってはいないだろう。
全ての席を回った後、一端、ガーフィッシュ達の元に戻った。
「はぁ……、疲れました」
タウロが、一行に弱音を漏らした。
「先ほどは言えませんでしたが、素晴らしかったですよ。3局全てで前半にハンデを渡して終盤でひっくり返す、最後は引き分けにして、花も持たせる余裕、驚きましたよ!」
ガーフィッシュが鼻息荒く、溜まっていた物を吐き出すように言った。
側でパウロが大きく相槌を打つ。
宰相の前では歓喜するわけにも、タウロを称賛するわけにもいかず、我慢していたようだ。
「いえ、買いかぶりですよ。宰相閣下は最初の2局で学習なされて3局目には修正されてきましたので、結果引き分けだったんです。次、対戦したらどうなることか」
疲れた笑いをタウロはみせた。
とにかく、面目は保てた。
「少年、サトゥー殿だったな」
振り返るとそこには宰相が立っていた。
「あ、気づかず失礼しました。……はい、ですが呼び捨てでお願いします。身分が違いすぎますので、恐れ多いです」
タウロは恭しく頭を垂れた。
「さっきは試すような事をしてすまなかったな。このゲームはシンプルだからこそ、打ち手の性格が見えて面白い。まだ、私は始めて日は浅かったが天狗になっていた。サトゥーにあそこまで実力差を見せつけられて、自分の愚かさを痛感したよ」
宰相は反省してみせた、どうやら負けた事に対して怒ってはいないらしい。
「いえ、宰相閣下はとても強かったです。3局目などは修正されての粘りは見事でした。次対戦したら勝てるかどうか……」
「そうか、そう言ってくれるか。確かに3局目は手応えは感じていたのだよ」
宰相は本当に嬉しかったのか声を出して笑った。
「……ところでだが」
笑いを収めた宰相の表情が穏やかになる。
「今回、急遽、エライーノ伯爵に変わって、私が呼んだのはお主をある方に代わって品定めする為だったのだが……」
「……品定め……ですか?」
入室した際の大勢からの鑑定のことだろうか?
「私のスキルのひとつに、S-鑑定があってな。だから人物を見る目に間違いはないと思っている。が、サトゥー、お主には効かぬらしい。一瞬はお主の能力はみえたのだがすぐに見えなくなった。そして、次の瞬間には平凡な能力に落ち着いていた。見間違いでなければ、こんなことは初めてでな。驚いている」
「はぁ」
タウロの新能力鑑定阻害(極)は、相手の鑑定を阻むだけでなく、タウロが無意識でも偽りの情報を見せる事が出来るのだ。
「良ければ、お主を信用し、ある方に紹介する為にも、私自慢のS-ランク鑑定を欺き、凌駕する強力な鑑定阻害を解除してくれないか?」
能力の使用がバレてるー!
タウロは背中にどっと汗が噴き出すのを感じた。
「……わかりました。じゃあ、宰相閣下にだけ……」
タウロは宰相閣下にだけ見えるよう意識して解除する。
「……ほうほう、これは興味深い」
見える様になったようだ。
「基本ステータスは低く子供のそれだが、器用は精密とやらの能力補正で跳ね上がっているな。真眼とは聞かぬ能力だが、物の鑑定能力以外にも気配察知にリンクするとはこれも、興味深い」
丸裸にされてる気分にタウロはなった。
「もっと、興味深いのはスキルは文字化けのひとつのはずなのに、複数の職業の熟練度がどれも上がっている事だ。だが、熟練度を上げていけば、それに比例してステータスも上がるはずなのだがそれがない……。サトゥーのものは不可解としか言いようがないな」
職業の熟練度が上がってるいるという情報は、知らなかったタウロは内心小躍りしたかった。
これまでの努力は無駄ではないという事だ、スキル無しの職業も努力すればそれだけ熟練度が上がる事が確認できた。
本当ならもっと細かく聞きたいところだが相手は宰相閣下である、タウロはグッと我慢するのであった。
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