第15話 初Fクエスト
Fランクへの昇格、翌日。
タウロは、早速Fランクのクエストを受注する事にした。
「Fランクのクエストに挑戦するのね」
ネイが笑顔でクエストの紙を受け取ると内容を確認する。
「あら、意外。これでいいの?」
タウロはFランクから出来る魔物退治のひとつ、一角うさぎ討伐などではなく、薬草採取を選んでいた。
ネイはタウロが普段から剣の訓練に励み、更には腰の小剣の価値を知っているだけに早く魔物討伐をしたいだろうと思っていたのだ。
「はい、やってみたい事もあるので、これを選びました」
昇格に浮ついてない事に驚きつつ、この子らしいとネイは感心するのであった。
ギルドの情報で街から近くの森に薬草が自生してる場所がある事は聞いている。
特徴が描かれた紙も渡された。
だが試したい事があるのでそれらには頼らない事にした。
そう真眼にリンクした新たな能力、植物鑑定を試してみたかったのだ。
タウロはギルドから貸与された籠を担いで、森に到着した。
「植物鑑定……!」
到着するとすぐ、クエストに指定されてある薬草のヒーラ草のみに視点を置いて探せるか試してみた。
すると、近くの草むらのみならず、少し離れた所からもヒーラ草の表示がでた。
「よし、思った通りだ。これなら、簡単にみつけて採取できる!」
タウロは片っ端から薬草を採取しまくるのであった。
わずか2時間ほどで予定よりはるかに多い沢山のヒーラ草を採取した。
結構森の奥に入った事もあり他の薬草の類もありそうなので、さらに真眼で価値のある薬草に絞って探索してみた。
するとところどころに色んな表示が出る。
「解毒効果のあるポイズー草に……うん?」
奥の茂みが揺れる。
独特のギャッギャッという声と共に緑色の肌をしたタウロと同じくらいの背丈に、鋭い眼、口からのぞく牙、全体的に人とは明らかに違う容姿、魔物であるゴブリンだ。
手には石斧を持っている。
タウロは咄嗟に茂みに身を隠した。
相手は1体、不意を突けば勝てるかもしれない。
ファンタジーものならここで倒して、デビュー戦を飾るところ。
「この剣の力も試したいから……」
剣を握る手にも力が入る。
「敏捷+5を活かして、逃げる!」
タウロは脱兎の如く逃げ出したのだった。
突然茂みから現れた子供にゴブリンも驚いたのだが、凄い勢いで逃げていく様を呆然と見送るのだった。
敏捷+5の力は想像以上で、身体が軽く感じ、いつもより疾走感を感じる。
逆に早く動け過ぎて戸惑うぐらいだった。
「これだけ動けるなら、Eランク討伐対象のゴブリンを相手にしても良かったかな……?いや、慢心は禁物だ。死んだら終わり、慎重なぐらいが丁度いいはず」
タウロは自分に言い聞かせて街に戻っていった。
「あら?タウロ君早いわね。もう採取できたの……って、何その量!?」
受付嬢のネイが驚くのも仕方が無い、タウロが背負っている籠からこんもり薬草が見えるのだ。
ギルドが籠を持たせるのは、万が一、群生地をみつけた時に沢山回収できるようにだが、ほとんどはノルマの3束30本を半日かけてみつけるのがやっとなのだ。
籠からみえるほど採取できる冒険者はほぼいない。
「群生地でもみつけてきたの?」
「そんなところです」
タウロは説明が厄介と考えてネイに合わせる事にした。
「それはついてたわね。最近、薬草が不足してたからみんな喜ぶわ」
「そういえば、1体、ゴブリンがいましたよ、ぼくは逃げてきましたけど」
冒険者には魔物の発見は報告義務がある、なのでタウロは素直にネイに伝えた。
「え?あの森にゴブリンが?逃げてくれて良かったわ。ゴブリンは複数行動が常だから多分、他にもいたはずよ。報告ありがとう」
ネイの話を聞いて、逃げて正解だったと思うタウロであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます