第9話 謎が深まる
買い物から部屋に戻ると、買った物のお披露目会になった。
「タウロ君、まだ子供なんだから少しくらい派手でもいいんだよ?」
ネイは服の質素感に少し不満を持った様だ。
「以前の服よりは全然着心地いいですよ」
タウロは麻袋の様だった服と比較した。
それを言われるとネイは何も言えなくなる。
気を取り直し、
「あ、この雨用コート良いわね♪鑑定してみても素材が傷ものだから安くなってるけど品質に問題は無いわ。これはお買い得よ!」
広げてみながら確認した。
「鑑定?」
またも異世界ものなら必ず聞くワードが飛び出してきた。
「ええ、私のスキルの1つよ。タウロ君には言ってなかったわね。物に使用できるの」
「人は鑑定できないんですか?」
「まだ一部しか能力が解放されてないからできないの。条件クリアの為に色々試してるんだけどね」
落胆する素ぶりを見せた。
「あ、でも、物だけでも十分役に立つのよ?クエストで持ち込まれた戦利品の鑑定もできるし、商人相手に騙される事も無いし。それにもっと最初の頃は、名前が表示されるだけだったからその頃に比べたら大分使える能力になったわ」
自慢気に胸を張る。
「条件クリアしたら、できるようになるんですね!」
「基本はそうだけど、才能があるかどうかも関係してくるそうよ。例えば──」
鑑定の場合、
仮に鑑定ランクS級の才能があるなら、条件を満たして全て解放できれば、何でも鑑定できるようになるが、鑑定G級の才能しかなかったら努力をして条件を満たしている状況でも能力を取得する事はない。
ただ、ランクは個人ではわからないので、才能が開花するかしないかは日々の努力と才能次第である。
「鑑定ランクS級なら、個人のあらゆる才能も見抜けるらしいと書物には書いてたけど……」
「それなら僕の文字化けスキルが何なのかもわかるかもしれないですね」
「その可能性はあるわね」
「あの、ぼく、浄化を覚えたんですが個人が所有するスキル以外の能力も条件を満たせば覚えられるものなんですか?」
タウロにとっては何気ない疑問だったが、ネイの反応は大きかった。
「え!?タウロ君、浄化覚えたの!!?治癒士が覚えるレア魔法じゃない!!!」
「みたいですね……」
「それならタウロ君の文字化けスキルは治癒士なんじゃない?」
「そういう事になるんですか?」
「君のスキルは文字化けスキルが1つだけで、レアな浄化を覚えたのなら治癒士しかないでしょ!」
ネイは興奮気味に言った。
だが、「あ」っと、つぶやくと、
「タウロ君、魔法『清潔』は覚えたわよね?」
と、タウロに質問した。
「いえ、『浄化』だけです」
「えー!?」
またも、ネイはびっくりしてみせた。
「ど、どうしたんですか!?」
「『浄化』って、治癒士が覚える中でも上位に入るのだけど、そう言ったものには覚えるのにも順番があるの。下位の『清潔』、中位の『清浄』と段階を経て覚えて、上位を覚えられるようになるという順番が」
「という事はどういうことでしょうか?」
タウロは軽く混乱した、それが事実なら自分は順番を飛び越えて浄化を覚えた事になる。
「少なくともタウロ君の文字化けスキルは治癒士のスキルじゃないという理屈になるわ。何か他の、『浄化』をいきなり覚える様なスキル…。うーん、聞いた事ないわ」
ネイが匙を投げた。
自分の文字化けスキルが一瞬解明されたかと思ったのだが振り出しに戻ったのであった。
ネイにナイフの鑑定をして貰ったが結構良い物だったようで、タダで貰ったと言うと…
「え?アンガスさんがタダでくれたの!?」
と、ビックリされた。
あのドワーフの人、アンガスって言うんだ、と思いつつ状況を説明すると
「なるほどね、それはアンガスさんらしいかも」
と笑って返した。
「アンガスさんは職人気質で鍛冶の事になると熱意が凄いのよ。私が鑑定できると知ったら、自分の作品を片っ端から鑑定させるし……」
ネイはその時の事を思い出して、どっと疲れたような表情をした。
「また今度、改めてお礼を言いに行った方が良いかもね」
「そうですね、わかりました」
うなずくタウロであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます