ノミから見た、ダニの考察

@admos

ノミから見た、ダニの考察

 私は、ノミだ。

 ああ、これは未だ発展途上のクム―――人間と己らを呼称する君たちにもわかりやすくしたものだ。

 本来、我らは我らのことを、カドゥムと読んでいる。


 本題に入ろう。

 今日は我らカドゥムから見た、ヂアヴァ―――クムの言うところによるダニの文明を考察しようと思う。


 ヂアヴァたちは、悔しいことに我々よりも優秀だ。奴らはいたるところに住んでいるが、特にお気に入りとしているのが、クムの作る毛織物だ。

 奴らは本来は南極だろうが何処だろうが生きていける文明を持っている。我らとて海中が限界だというのに。

 ヂアヴァの技術には我らも唾を呑むようなものがいくつかある。

 例えば、ファイナルシェイレンガースラーヴァキュム―――クムに分かるように言うのなら、都市を覆うほど大きい傘だと思ってほしい。


 奴らはそれでクムの洗濯機なる大量殺戮兵器を防いでいるのだ!


 その上、融資されたファイナルシェイレンガースラーヴァキュムは応用すればクムの異常行動、そう、オフロにも対抗できる!何億という我等が朋が散っていったアレにだ。

 クムの七不思議にはオフロが入っているのだが、近年はクム以外にまで強要するようになっている。


 まことにやめてほしい。

 老害共、ゲフンゲフン。尊敬するご老人方が、愛護法をわめき出して面倒なのだ。


 おっと、話が逸れたな。


 ファイナルシェイレンガースラーヴァキュムを含むヂアヴァ4大発明に話を戻そう。


 2つ目はアサトナシスだ。

 クムに分かるように言うなら、全種族翻訳機かね。脳波のパターンと統計学、種族的文明の発達に対する考えから言語形態を導き出したのだ。

 発明者であるダーリアサトナシス氏は私も私淑している。

 ダニ生の6割を研究に捧げたお方だ。

 かの発明により、三大文明種族であるヂアヴァダニカドゥムノミスナハヨツスジマダラカ―――ヒトスジマダラカのような低俗な種族と一緒にしてはいけない。スナハは光学迷彩など光の技術は全種族に勝つほど知性に溢れているのだから―――は交流を始めたのだ。約8000年前のことだな。その頃から発展の兆しを見せていたクムやエドゴシロアリセンジクンテングアリクイはいうなれば我々にとって可愛がって育ててきたペットのようなものだな。


 そう、クムで言うなら―――小さなアマゾンカワイルカの群れのようなものだ!


 我々からすれば、クムの言葉は単純だ。研究材料にもされ尽くしてきたな。

 だが、センジクンと種の存亡を賭けた大戦乱を起こしたのはどうしてだろうな。

 今では歴史は隠され、センジクンは我々が保護した少数を除いて怪物や妖怪として伝承を遺すばかり。

 個人的に気に入っているのはニホンの酒呑童子伝説だな。あれ、本来はロミオとジュリエットのような話だからな。

 

 では、三つ目に移ろうか。

 それはカシュグイアン。ワープ技術というやつだな。

 クムは相対性理論にまではたどり着いていてもそこから先がなぁ。大天才アインシュタインは我らの存在にも気づいていたからな。まさか、水爆の理論の発明中に小型生命体の高い知性にたどり着くとは思わんて。

 ワープ技術はそこまで大した話ではない。もう千年もすればクムも星間ワープぐらい開発できるだろう。


 4つ目はノトス。

 これはヂアヴァの発明の中で唯一失敗作と言っても過言ではない。


 詳細は省くとするが、クムがたどり着かないことを祈るよ。

 もう戦火がこんなところまで…。

 

 ノトスは我ら3種族の絆を壊した。



 ヂアヴァの技術は尊敬に値する。

 ヂアヴァの文化は素晴らしいものだ。


 だが、だからこそ、私は言いたい。





 平穏とは停滞であり、平和とは不毛な呪縛であるが、争いとは、全てにおいて悪なのだ。

 発展し、肥大化しすぎた心ほど、恐ろしいものはない。


 クムの―――人間の研究者たちに伝えよう。好奇心とは、発展をもたらすが、モノを作るときには必ず、大切な誰かの顔を思い出してくれ。


 ―――大切な誰かが、笑顔になれる研究をするのが、我らの本分だろう?





『笑顔の研究〜日記に書かれた走り書き〜』

より抜粋。(西暦3015年著:親愛なる人たちへ、1個人が送るプロジェクトより、他種族の歴史部門)

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