4 決戦前夜
それからのメリーと過ごした夏休みも、本当に幸せな日々だったと思う。
祭りのクジで手に入れたゲームを二人で遊び。
流行りの映画を見に行って感想を言い合ったり。
海にだって行った。
楽しくなかった日なんて一日たりとも存在しなかった。
そんな中で、徐々にメリーの電話帳に引かれる斜線は増えていく。
刻一刻とその時は迫ってくる。
そして……八月三十日。
後二人に迫っていた電話番号に今日も斜線が引かれ、最後の一人が残る。
……俺の電話番号だけが残る。
明日、全てが終わるんだ。
メリーの復讐も。
俺の人生も。
全部終わる。
……終わらなければならない。
一応無事事を終わらせるための段取りは考えた。
後はその時を待つだけだ。
……最後の時間を彼女と共に楽しむだけだ。
「ほんとに家で食う感じで良かったのか? ほら、最後なんだからさ、結構良い店とか行ってみても良かったんじゃねえの?」
「いいの。最後だからウチで食べたいんだ」
そう言ったメリーは何かに気付いたように、あ、と声を上げて訂正する。
「私がウチでなんて言ったらおかしいよね。此処将吾の家だし……なんか自分の家みたいに思っちゃってた」
「正真正銘、お前の家でもあるだろ……少なくとも俺はそのつもりでいるよ」
「……そっか」
「……ああ」
そんなメリーとの最後の晩御飯。
何にするかを話し合った結果、焼き肉という形になった。
当然、メリーが怯えるのを避ける為にホットプレートを使用する。
そこに買ってきた肉や野菜を投入していく。
そして焼けた肉をまずメリーが一口。
「うわ……すっごい美味しい」
「知っての通り今回、すげえ良い肉買ったからな。それで普段と変わらないなんて事があってたまるか……ってやべえなこれ。マジでうめえ」
「ご飯が進む……幸せだぁ……」
メリーはそう言って幸せそうな笑みを浮かべる。
……いつものように、そんな表情を見せてくれる。
その表情を目に焼き付けよう。
その笑みを拝めるのも、あと少しの間なのだから。
……そう、あと少し。
明日には全部終わっている。
終わらせるんだ。
……雑念は、全部全部全部全部。
全部……押し殺せ。
押し殺して、完遂させるんだ。
メリーさんの復讐劇を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます