8 素晴らしい一日

 夕食が終わった後、思い出したようにメリーと連絡先の交換を行った。

 彼女の復讐が終わるまで。

 俺の命が尽きるかもしれないその時まで。

 とりあえずそれまでの生活はやりやすくなるだろう。

 彼女を幸せにする為に生きる事が楽になるだろう。


「……」


 しかし本当に俺の選択は正しいのだろうか?

 本当は彼女の復讐決行日まで幸せに生きてもらうなんて事ではなく、早急に首を差し出して復讐を終えてもらう方が正しいのではないかと。

 それが彼女の為になるのではないかと。

 そう思う。

 だけどやはり現在進行形の彼女が楽しそうで。

 もし自分が与えられる立場なら、やれるだけの事をやってあげるのが一番な気がして。


 だからこの選択を俺は選ぶ。

 別に首を差し出す事が間違いだとは言わないけれど。

 どちらも間違っているなんていう一瞬浮かんできた、頭のおかしい保身に溢れた自己中心的な考えは、すぐに掻き消した。


「……頑張れ」


 そしてベットの上に寝転がりながら、自身を鼓舞するようにそう呟いた。

 メリーが幸せである事を祈りながら。



     ◇



 そうして今日も一日を終えた。

 今日は素晴らしい一日だった。

 メリーと一緒にいると幸せな気分になれるんだ。

 幸せな気分にしてくれるんだ。

 そんな相手を幸せにする為なら、きっとなんだってできる筈だ。


 メリーの為に。

 メリーの為に。

 メリーの為に。

 メリーの為に。


 明日も……これからも、頑張って生きていこうと思うよ。

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