6 命の消化

 結局あの後メリーに自分の動きを棚に上げられる形で笑われて、それに軽く反論する流れで二人プレイで勝負することになって。二人して醜態を晒して。

 それでも楽しい時間を過ごした俺達は、モール内のファミレスで昼食を取った後、再び電車に揺られて自宅へと帰ってきた。

 別に時間を潰そうと思えばいくらでも潰せる。

 だけど互いにやるべき事は色々とあって。午後からはそれらを消化していく事になる。


「じゃあ晩御飯までには帰ってくるよ」


「おう、車に気を付けてな」


「うん!」


 そう言って彼女は元気よく家を飛び出していく。

 曰くゆっくりとこの辺り近辺を歩いてみたいのと、ついでにバイト探しだそうだ。

 ……多分だけど、メリーのやりたい仕事さえあれば、あっさりとバイトは決まるだろう。

 履歴書を書いて後日面接という形になるだろうから、今日即決で決まるような事は無いだろうけど。

 まあとにかく明らかな経歴や年齢を偽装したソレを持参して挑む面接に落ちるような事は無いだろうと思う。


 ……今の自分の状態を見ればそれは容易に理解できる。


 無茶苦茶な経歴も。

 あの容姿で、違和感なくフリーターができるという理由で設定した18歳という年齢も。

 おそらく、割とあっさり通す事ができる。


 メリーには。

 メリーさんという都市伝説には、それだけの力がある。

 だから心配はしていない。


 しいて今日のメリーの行動で心配な事があるとすれば、おそらく今日もどこかでやるであろう犯人捜しの過程で、彼女が面倒事に巻き込まれたりしないか。

 精々がその位の事だ。


「……よし、俺も行くか」


 俺は俺でやらなければならない事がある。

 当初から考えていたように、二台目のスマホの契約。

 後は夕飯の買い物も行かなければならない。

 そして……もう一つ。


「なんか良いのあるかな……料理本」


 メリーに少しでも満足な食事をしてもらう為に、料理本を買いに行く。

 午後からしなければならない事は、大体そんな感じ。

 そうやって静かに、命のリミットを消化していく。

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