メリーさんの電話帳

山外大河

プロローグ

被害者と加害者の日常

 七年前、当時小学三年生だった俺はある女の子を焼き殺した。


 当時から碌でもない人間性をしていた俺は、偶然としか言いようがない程の奇跡的な出会いを果たした彼女に対し碌な感情を抱く事も出来ずに焼き殺すに至った。

 当時は自分のやった行為の重さを理解しておらず、当然の事ながら悔いや後悔に苛まれる事もなくて、寧ろ解放感にすら包まれたものだけれど。

 それでもあれから七年も経って高校生になった今なら、当時の自分の惨たらしさを理解もするし悔いもする。


「半分持つよ、重たいだろうし」


 それを悔いる俺の右手から買い物袋を奪い取ったのは、俺の同居人だ。

 金髪の髪を短めに切りそろえた、人形のように可愛い中学生程の容姿の女の子。


「別に重くねえからいいって……せめて持つならこっちにしろよ。少しは軽いぞ」


「そうする。なんかこれ思った以上に重かったし……って重! こっちも重いじゃん!」


「少しは軽いとしか言ってねえだろ……ほら、返せよ。両方持つから」


「いい、こっちは私が持つの」


 そう言って笑う優しい彼女は俺を殺す為にそこにいる。


 八月一日の夕暮れの元。俺は彼女に殺されるのを待っている。

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