第2話「霊拝堂学校」
ここは千葉県の森の中にひっそりと立つ私立
“霊拝堂学校”。周りは自然豊かすぎて遊べる施設もなければ、人が住んでる家もコンビニもない。
最寄りの駅までは歩いて5時間かかる。
一応バスは通っているが、近くのバス停に
行くまで歩いて1時間。しかもバスは2時間に一本。祝日だと酷い時で4時間待たなければ
いけない時もある。
そんなド田舎な場所に建てられた学校。
石畳みを歩いて何段にも続く石段を登ると
狐の像が迎えてくれる。中に入れば寺が
幾つもあり静かに佇んでいる。
生徒教師は袴かスーツどちらか選ぶことが
でき、それらを着て授業を行う。
表向きは仏教の学校だと通しているが、立派な霊媒師を育てる全国に一校しかない特別な学校。特別な授業を受け特別な訓練をする。生徒は一年が2名、二、三年が3名ずつで
四年が2名。計10名の生徒が在学している。
生徒は皆寮生活で教師たちも学校内に部屋を幾つか所有している。生徒が希望を出せば外出することはできるが外泊は認められない。
側から見れば体育会系の厳しい学校だと思うかもしれないが、ここは特殊な人が集まる場所。夜にも授業が行われるため一般の高校生たちが味わう青春をあまり送れない。
だからこそ、生徒には出来るだけ不自由なく過ごせるよう森の中に電波を通したり、各寮の部屋にテレビ、パソコンといった端末など設置している。
地元の人でもあまり知られない“霊拝堂学校”
近年はインターネットの力もあり仏教の学校が森の中にある。と、知られてはいるが中身は謎に包まれている。包んでいるのだ。もちろん、公開学校や取材なども行なっていない。人は知らないことに興味を持ち様々な力を使って暴こうとする癖があるが、学校が創立されてから外部と関わったことは警察を除いて1度もない。なぜ外部との関わりを経っているかというと、第一に生徒の身の安全。教師たちは生徒の一保護者なわけで彼らを危険にさらさないよう見守る責任がある。次に入学希望者を出さないため。
お分かりのとおり、ここは特殊な学校。一般的な試験を受けて学校に入るわけではない。由緒ある霊媒師たちのご子孫を学校側から逆オファーをして招いているのだ。もちろん霊と話す、霊を祓う、悪霊を抹消することができる子を前提に。そうして選ばれた生徒はここで4年間みっちり修行して卒業と同時に霊媒師になる。後はここに残り霊媒師をしながら自分の技術を伝承するため教師になる人もいる。火月夜もその1人だ。
今3.4年は職場体験という名の霊を祓う任務を任されている。勝手に活動はできないがそこに霊媒師としての教師(大人)がいることで暗黙に了承されている。一応依頼があって行なっていることなので罪にはならないが、彼らはまだ未成年。学生がそれをするとなると話は別だ。だからこそ大人も同伴して一緒に実践がてら祓っている。もちろん依頼料も頂く。決して安くはない。
上の学年がいないので1、2年は少し伸び伸びと活動している。
火月夜はいつもと変わらぬ校内を歩き、今朝のニュースで見た事件について考えていた。
後ろから猪のように勢いのある気配を背で感じながら。
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