第32話 〈番外編〉ホストなのになぜかお客さんに恋をしてしまい困ってます
「えっ、ルミちゃんとミホちゃん、本当にデビルジャムに行ったの?!」
帰宅して、待っていてくれた愛衣さんに今日の報告をすると、まさか本当に来るとは思っていなかったらしく、驚いた顔をしていた。
「なにも教えてくれないなら夕陽くんに聞きに行く、って言われて、どうぞどうぞとは言ったんだけど。さすがあのふたり、行動力があるわ」
「まあ僕は付き合ったとは言いましたけど、あとはご想像にお任せしますと伝えておきました」
愛衣さんは僕の脱いだジャケットをハンガーにかけながら、得意の意地悪そうな笑顔を浮かべた。可愛い。
「へぇ、そうなの? 本当のこと、言っちゃってもよかったのにぃ」
僕はシャツのボタンを外しながらいたって冷静に切り返す。
「本当のこと……いつも強気な愛衣さんが、ベッドの中では意外と素直で可愛いんですよ、って?」
「あんたどこでそんな言葉覚えてきたの! ばかっ!!」
「ごめんなさい、冗談です」
今度は顔を真っ赤にして怒っている。可愛い。
「あ……そういえばスバルさんは、優也さんとお泊まりはしてるけどなにもしてないって言ってたなあ」
何気なく思い出したことを口にしてみたら、愛衣さんも話題に乗ってきた。
「やっぱりそれ本当なのかな?! この前、優也に聞いたときもそう言われた。でもなんか、怪しかったんだよなあ」
「え、怪しいって?」
「いや、あいつ、わかりやすいから。スバルくんはわかんないけど、少なくとも優也の方はいやらしい気持ちでいるはず」
「なんですか、その言い方」
思わず笑ってしまった。他人のプライベートなことを想像することに罪悪感はあるものの、間違いなくみんな悪気はない。ネタにしているというより、期待しているに近いかもしれない。
愛衣さんは人差し指と親指を立ててあごに当て、まるで探偵のようになにかを考えている。可愛い。
「だって、否定してるくせにめちゃめちゃ顔赤かったし。やっぱりしてないって嘘なんじゃないかな。まあいくら考えたところで、事実を知る術はないんだけどね」
「スバルさんも照れながら否定してました。でも、本当にしてたらスバルさんは言うと思うんですよね」
「言うかな? そんなこと」
「スバルさんにそんな紳士的な配慮はないですよ。そういう、あっけらかんとしたところが彼の良さでもあるし」
たしかに。と言って、愛衣さんは笑った。
「なんだろう、余計なお世話ってわかってるけど気になっちゃうんだよね。親心にも似てる」
「なんかわかりますそれ。僕、腐男子じゃないですけど、ルミさんやミホさんが尊いって言う気持ちわかりますもん」
「腐男子って何?」
愛衣さんがあまりにも無邪気に聞いてくるので、なんでもないです、とだけ答えておいた。
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