この小説は、他人に迷惑をかけることや、小学校のドッジボールを心底嫌うような、優しい(と私には見える)青年が主人公です。ところが、その彼が、ラストではまさにドッジボールさながらの戦いに身を投じていくのだから、皮肉のきいた構成です。どうして彼は戦うことになったのか? なぜかつてなかった力が湧いてくるのか? きっと、求めても得られなかった「孤独」がついに得られたおかげなのでしょう。