4 マーガレット 名前を呼んで
マーガレット
名前を呼んで
最後に上級生らしいことを、一つ言わせてください。メテオラくん。命の選択を迫られたとき、あなたは犠牲を選べますか? みんなを助けるなんてことが本当にできると思いますか? そのとき、あなたの心は、その欺瞞に耐えられますか? 闇に落ちたりしませんか? 私と、……同じように。 ……の願い。
その巨大な王国には二つの塔のようなものがあった。
一つは魔法樹と呼ばれている魔法使いたちが信仰している天まで届くような大きさのある巨大な大樹。
そしてもう一つはその魔法樹と対になるようにして建てられている真っ白な石で作られた人間たちのまるで巨大な塔のようにも見えるお城。
その二つの巨大なものが並んで立っている風景は、まるでこの魔法使いと人間たちが一緒になって暮らしている『北の王国』のことを象徴している風景のようだと、そんなことを魔法使いのマーガレットは思った。
人間の城である塔の頂上付近から、そんな北の王国の風景を見つめていたマーガレットはやがて魔法の杖に腰を下ろすと、とん、と壁を蹴って、空の上にふわりと浮かぶと、それから空の上を塔を周りを回るようにして、ゆっくりと降下しながら、いつも以上の賑わいを見せている北の王国の街の風景を見ながら、空の中を飛んだ。
……なんだろう? 不穏な気配を感じる。
魔法使いの中でも最上級と呼ばれている、数万という和の魔法使いが暮らしているこの北の王国に三人しかいない最高位の魔法使いの一人である、マーガレットはそんないやな雰囲気を今朝からずっと感じ取っていた。
今日は永遠の平和を願う千年祭の前夜祭。
……明日は、千年祭。
そんな一年でもっとも北の王国が賑わいを見せるお祭りである千年祭の日を狙って、『誰かがなにかの作戦』でも計画しているのだろうか?
そんなことをマーガレットは考えている。
あるいは自分の感じているいいやな感じの正体をどこかに見つけるために、マーガレットは今朝からずっとこんな風にして北の王国の様子をずっと隅々まで監視し続けているのだった。
そんなマーガレットの『二つの紫色に光り輝いている大きな目』が街の中の騒ぎを捉える。
その瞬間、マーガレットはお城の真っ白な壁を蹴って、空の中を加速する。
それから、北の王国で暮らしている魔法使いたちの中で最速の魔法使いであるマーガレットは騒ぎの起こっている市場の上空まで、数秒も立たずに到着した。
そこには追いかけられている一つの小さな影と、それを追いかけている二つの小さな影がった。
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