僕たちのニューシネマパラダイス~奇跡の一泊二日、名古屋への旅~
長野友弘
第1話 芸能人の逮捕がきっかけだった
人気テクノユニットのメンバーPが麻薬取締法違反で逮捕され、私の母校「静岡南高等学校」は少しだけ有名になった。
Pとは同じクラスになった事は無いが、テニス部の私、野球部の彼とはグランドすれ違う事は多く、「よう!」とあいさつする程度の仲ではあった。
私は静岡南高等学校を卒業して35年経つが、静岡には一度も戻っていない。
東京の大学に進学しそのまま東京で就職し、両親も引越したため、静岡に家族が残っていないからだ。
それゆえ、母校の同窓会はあったらしいが、実家が静岡に無い私には案内のはがきが届く事も無く、仲の良かった同級生たちとも会う事は無かった。
静岡は東京から近く、ほんの数時間でいつでも行くことができる。
そんな気持ちもあり故郷は遠ざかったままだった。
それがPの逮捕により同級生達のSNSはざわつき、一人の友人が私のFacebookを見つけ出してくれた。
私を見つけてくれた友人は大山田章。
高2の時の同級生で私を無理やりバンドに誘い、私の職業の方向性を決めてしまった大切な友達だ。
私はそのバンドで音楽の楽しさを知り、就職しても30歳までバンドを続けプロを目指し、広告会社で働きながらも自分の曲をCMソングにしようと営業マンの立場で企み、芸能事務所とコネクションを持ち、後に興行プロデューサーになった。
オリコミというチンケな広告代理店で働いたとき、芸能事務所と仲の良かった私を優秀な営業マンが見つけてくれて、クライアントの上場キャンペーンとして、ブルーマンを呼ぶ企画実現の為に声をかけてくれたのだ。
つまり、元をたどれば高校時代、大山田章に会わなければ、私は今の興行の仕事をしていなかったはずだ。
「おーい!主水(当時の私のあだ名)!たまには静岡に戻って来いよ。飲みに行こうぜ!」
大山田章がFacebook経由で連絡をくれた。
大切な友人のありがたい誘いだった。
そして2019年の4月、私は35年ぶりに静岡の小さな同窓会に行く事にした。
参加者は私を含め4名。
その中の一人、当時は一番仲の良かった塚田富雄が参加する事を知り、一寸躊躇したが、もはや35年ぶりの再会。
昔の事件は、互いに時効だろうと思い、静岡に向かった。
久しぶりの静岡駅前は都会になっていて、街の面影を探すのに苦労した。
指定された居酒屋に行くと懐かしい顔ぶれにすぐに気づいた。
美男子だった富雄は腹の出たおっさんになっていて、同様におっさんになった私の姿を見て互いに笑った。
35年ぶりの再会は笑顔で始まった。
悪友4人の飲み会はとても楽しく、にぎやかで、タイムスリップしたように昔話に花が咲いた。
しかし、私の20歳の誕生日の日、東京代田橋のボロアパートで富雄と長澤美穂との3人の間に起きた事件に触れる事は無かった。
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