第123話:溺愛・クラリス視点
「そうだね、教都に送るよ。
理由は分からないけど、大魔境には送らない方がいい気がするんだ。
サクラや大ダンジョンの事もあるし、常識外れのファイターキングゴブリンとファイターキングオークが生まれてきたこともある。
今大魔境の奥に行くと、とんでもないモノを呼び出してしまう気がするんだ」
アレックスは本気で危機感を持っているようです。
確かに私も気になっていました。
この世界にとんでもない危機が迫っているのではないかと。
だからこそアレックスのような英雄が生まれて来たのではないかと。
「そうですね、それは私も気になっていました。
でもいつまでも無視することはできないとも思っています。
早めに確かめに行くことで、危機を回避できるかもしれません。
逆に確かめに行くことで危機を呼び込んでしまうかもしれません。
全てはアレックスの決断次第だと思っています。
私はアレックスが決めたことに従いましょう。
アレックスとサクラがいなければ対処できないのですから」
全て嘘偽りのない私の本心です。
そもそもサクラが戦ってくれなければ、ファイターキングゴブリンにもファイターキングオークにも勝てませんでした。
大陸中の国々が連合しても勝てなかった可能性が高いです。
そのサクラに命令を下せるのはアレックスだけです。
ただ元々慎重なアレックスが今はもっと慎重になっています。
だから危険な事は絶対にしないでしょう。
それは教団への対応を見ても分かります。
もう何時でも教皇と枢機卿団を皆殺しにできます。
なのに一向に攻撃を命じません。
今教都にいるスライム達がやっている事と言えば、数を増やして力を増す事。
教皇と枢機卿団の悪事の証拠を集める事です。
でもそれはもう十分に集まっています。
それを暴露するだけで教都を二分する争いが勃発するでしょう。
サクラが動かなくても教団の力は激減します。
でもそれすらアレックスはしません。
ただスライムを増やして情報を集めているだけです。
この世界の異変を本気で恐れているのなら、教団を壊滅させて教都のスライムを帰還させるべきでしょう。
それすらしないのは、実は何も恐れていないという事です。
アレックスは単に自分の欲望を満たしているだけだと思います。
「ブロアーがご機嫌ですねぇ。
ベロベロベロベロ、イナイイナイバアァ。
ブロアーはとても可愛いですね」
アレックスはブロアーと私と一緒にいる時間を長くしたいだけなのです。
今まではどうしても侍女や見届け人の目を気にしていました。
でももうまったく気にしなくなりました。
まあ、愛を交わすわけではなく、溺愛している所を見せるだけなのですが。
以前のアレックスならそれも見せないようにしていました。
でもそんなアレックスの変化を私は好ましく思っています。
このままずっと全部曖昧にして暮らしてもいいですね。
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