第115話:追討軍4・クラリス視点
アレックスがサクラの中で奮闘しています。
流石アレックス、遠くからでも縦横無尽にスライムを駆使します。
ですがもっと近くで指揮したいと思っているのが分かります。
一旦敵に奪われたスライムを力づくで確保するのではなく、今直ぐにでも自分の従魔に戻したいと思っているのが、手に取るように分かります。
「フェリシティ、今私が激しい運動をするのは危険かしら」
「申し訳ありませんクラリス王太女殿下。
軍や政治の事ならばお答えできますが、妊娠については分かりません」
私はフェリシティに今やれることを聞いてみましたが、駄目でした。
フェリシティにも分からない事があるのだと初めて知りました。
そこで見届け役などの老練な女官や侍女に確認してみました。
残念ですがあまり激しい刺激は危険だと言われてしまいました。
「ですが今までと同じ状態なら、サクラが移動していていても平気ですね。
サクラがどれほど激しく早く移動しようとも、中に振動がなければ平気よね」
「それはそうでございますが」
乳母も女官も侍女も、全員責任を負うのが怖いのでしょう。
アレックスは私の事を心から愛してくれています。
迂闊な事を言って私やお腹の子に何かあったら、アレックスからどのような報復を受けるか分かりません。
彼女達にそのような危険な事を聞いた私が悪いのでしょう。
「サクラ、私とお腹の中の子に危険が及ばないようにしながら、アレックスが奪われたスライム達を迎えに行く事はできますか」
「可能でございます、クラリス王太女殿下」
流石サクラです、即答してくれました。
もしかしたら何時でもできるように考えていてくれたのかもしれません。
私やお腹の中の子供の為ではなく、アレックスの為でしょうが。
「最短の順番は既に計算しているのですね」
「はい、計算はできております。
ただ大きな問題がございます。
アレックス陛下の決断次第で順番が大きく変わってしまいます」
何か重大な問題があるようですね。
「それはどう言う事ですか、サクラ。
私に言える事なら言ってみてください」
「それは今スライム従魔士に預けているスライムをどうするかです。
今までと同じようにしていると、必ずまたスライムの支配権を奪われます。
今こうしている間にも、どこか私達の知らない所で、大切なスライムを奪われているかもしれません。
できる事ならスライムだけは、従魔士に従魔として貸し与えるのではなく、アレックス陛下の従魔のままで貸与する方がいいのです」
確かにサクラの言う通りです。
直ぐに全スライムを回収しなければいけません。
問題は変に優しい所と約束に頑固な所のあるアレックスの性格です。
為政者として緊急時には約束を反故にする決断をしてくれればいいのですが。
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