第93話:オーク戦

 盾役にさせたファイターキングゴブリンに守備系と能力向上系の魔術をかけた。

 4頭のプリーストロードゴブリンにも回復を支援させ、5頭のシャーマンロードゴブリンに敵オークを無力化させる麻痺や沈黙の魔術をかけさせた。

 ヒュージ以下のゴブリンには、身の丈に合ったオークを無力化させた。

 だが主戦力がサクラなのは間違いがない。


 襲い掛かってくるヒュージ以下のオークを片っ端から拘束して身体に取り込む。

 取り込むとはいっても、消化吸収するわけではない。

 サクラの身体の中に作った檻の中で隔離するだけだ。

 そして自由に攻撃を繰り返させて、オークのスキルをサクラに習得させる。

 ゴブリンからスキルを得たのと同じ事だ。


 だが相手がレベル1ファイターキングオークだとそう簡単に取り込めない。

 ファイターキングゴブリンに防御系魔術と強化系魔術と向上系魔術を重ね掛けしても、まともにファイターキングオークの攻撃を受ければ即死もあり得た。

 敵もこちらと同じように、防御系魔術と向上系魔術を重ね掛けしていたのだ。


 まったくもって侮れない相手である。

 まあ、ゴブリンに考え付いたことが、オークが考え付かない訳がない。

 進化を重ねる毎に賢くなるのはどんな種族でも同じ事だ。

 同じキングにまで進化していれば、またここで種族の基本能力差が出る。

 普通ならゴブリンがオークに勝てるはずがないのだが、今回はサクラがいるから全く問題ない。


 ゴブリンは守備に徹しているし、使っている盾もサクラが圧縮強化した岩盤製だ。

 森の大木を引っこ抜いて棍棒として使っているオークが相手なら、盾が破壊される事などない。

 しかも周囲に広がったサクラが、四方八方から圧縮強化岩盤製の剣でオークを突くので、集中してゴブリンと戦うことができない。


 更に言えば、ファイターキングオークに防御系魔術と向上系魔術をかけていたプリーストロードオークが、全頭サクラに取り込まれてしまっている。

 ファイターキングゴブリンは、サクラとプリーストロードゴブリンとシャーマンロードゴブリンの支援を引き続き受けている、ファイターキングゴブリンとの能力差が縮まってきた。


 オークにも心があって、不安や恐怖を感じるようだ。

 不利になり逃走しようとしたが、そう簡単に逃がすサクラではない。

 時に追撃捕縛の触手を叩き潰されながらも、オークを逃走させずに戦わせ続けた。

 破壊された触手分の身体は、直ぐにサクラ自身が回復していた。

 俺が魔力を貸し与える必要もないくらいの回復力だった。

 半日にも及ぶ激しい戦いで体力も魔力も尽きたファイターキングオークを、麻痺と眠りと能力低下の魔術をかけた上で、サクラは身体に取り込むことに成功した。

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