第89話:突貫街道づくり

 サクラとの話し合いで基本方針が決まったあとは早かった。 

 遅れを取り戻すために、突貫工事で砦町の基礎だけはサクラが作った。

 宿泊のための宿を一軒と城壁と濠だけを造り、余裕をもって1100頭のスライムを残して砦町を完成させてもらう。

 当初の予定より七日程度は次の国への到着は遅れるが、最初からそれくらいの予備日は設けていたので、次の国との約束日までには会談場所に到着できる。


「大魔境のロードスライムと輸送役のロードスライムに連絡をして、こちらへの食糧輸送量と輸送頻度を増やさせたよ、だから安心してくれクラリス」


 クラリスが色々と心配してくれて、多くの提案をしてくれた。

 俺も思いつていた事だが、そんな事を口にしてクラリスの想いを無碍にするのは男のやる事ではない、素直に喜んでお礼を言うのが男だと思う。

 そんな風に2人仲良く同じ事を思いついた1つが、大魔境から運んでくる食糧を増やし、分裂させたベビースライムを早くスライムに成長させる事だった。


 予定通りの行程で教都の教皇と枢機卿団を討伐する程度の事なら、多少大ダンジョンで生産する食糧を増やしても、残してきた魔宝石で十分持つ。

 岩や砂を食糧にできる事が分かったから、増やし過ぎたスライムの食糧を心配する必要もなくなった。

 それに俺にはクラリスも思いつかなかった案がある。

 大魔境から食糧を運んできてくれたロードスライムに、新しい魔宝石を大量に渡して、ダンジョンコアが何の心配もなくダンジョン魔物を創り出せるようにする事だ。


 今の俺は、毎日生み出される膨大な魔力を魔法袋化した魔力器官に蓄えるだけで、全く使用していない。

 それはサクラも同じで、レベル2キングスライムのサクラが生み出す魔力は、俺の足元にも及ばないが、人間基準から言えば笑うしかないくらい莫大な量だ。

 それを使わずに霧散させるのはあまりにもったいない。

 今は主従の絆で俺に環流させて魔力器官に蓄えているが、それでは死蔵させているのと変わらない。


 非常時に備えて、ある程度は蓄えておきたい気持ちはある。

 憶病なくらい慎重な性格だから、つい予備の予備の予備まで考えてしまう。

 だがそんな性格の俺でも、今蓄えている魔力量が多過ぎる事は分かっている。

 あくまでも予測値でしかないが、この世界に古代龍が存在しているとしても、今蓄えている魔力量で1万頭は斃せるだろう。

 古代竜ではなく、古代龍が相手だと考えての1万頭だ。

 まあ、この世界に古代龍と表現していい存在がいるとは思えないけどね。


「アレックス様、サクラがお風呂が沸いたと言っています、一緒に入りませんか」


 そんな事を言われたら照れてしまうやろ、クラリス王太女殿下。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る