第87話:急ぐべきか力を得るべきか
サクラの意見具申はとても魅力的で、直ぐに認めそうになってしまった。
だが今は即断即決が必要な時ではない。
多少は時間的に余裕があるから、無理をしなくてもいい。
俺が見落とした事で、クラリスの名誉が傷つくような事は絶対に嫌だ。
今はよくても、将来クラリスの不利になってはいけない。
憶病なくらい慎重だった前世からの性格は、そう簡単には変わらない。
だからサクラの意見の長所短所をよく考えてみた。
長所的には、まずは他国に長大な街道領地を得ることができる。
しかもその街道領地は、隣国を二分する戦略的に重要な存在になる。
更に輸送流通を牛耳り、莫大な富をもたらす可能性もある。
隣国の支配に反抗的な民が集まり、叛乱分子を集める事になるだろう。
街道領地で善政を行い信用と忠誠を獲得すれば、何時でも隣国を侵略占領することができるだろう。
短所は簡単に分かる、クラリスが大陸中から危険視される。
どう好意的に見ても、隣国に武力圧力をかけて領地を割譲させている。
それも地域的に分割させるのではなく、分断させている。
普通に考えれば、分断させてから1つずつ侵攻占領併合すると予測できる。
危機感の強い王侯貴族なら、クラリスに刺客を放つだろう。
それでなくても俺がサクラとファイターキングゴブリンを使役している事で、必要以上の危機感を与えてしまっている。
長所と短所を考えれば、長所の方が大きいとは思うのだが、問題がある。
短期的な戦力の低下がとても不安だ。
1万頭分のスライムを分裂させる戦力低下が不安でしかたがないのだ。
その間に王侯貴族が攻撃を仕掛けてきた時に、俺はクラリスを護りきれるのか。
教会の秘匿兵器を不安に思っていたが、王侯貴族の中にも長い歴史を誇る家があり、彼らが秘匿している兵器の中に、サクラを殺せるモノがあるかもしれない。
(更なる意見具申宜しいですか)
サクラが言葉ではなく心に伝えてきたから、よほど大切な事を伝えたいのだろう。
クラリスにも聞かせられない内容なのか、それとも家臣達に聞かせたくないのか。
どちらにしてもとても重大な内容だと思う。
(ああ、構わないよ、いや、むしろ気がついたことがあれば、何時でも何でも意見してくれ、サクラの言う事は真摯に受け止めるよ)
(では率直に話させていただきますが、戦闘経験値を獲得するためにゴブリンとスライムを戦わせているのですが、スライム同士で戦わせてみてはどうでしょうか。
スライム同士で戦わせて戦闘経験値が得られるのでしたら、砦町に残したスライムだけでレベル上げが可能になります。
しかも食糧は岩や砂、木々や草花だけで大丈夫です)
俺は目から鱗が落ちるような衝撃を受けた。
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