第85話:歓喜・クラリス王太女視点
アレックス様が、私がいない間寂しかったと言ってくださいました。
普段絶対に弱音を口にされないアレックス様がです。
こんなうれしい事はありません、思わずアレックス様に抱きついてしまいました。
アレックス様は優しく抱き返してくださって、口づけしてくださいました。
でも、この前のようにはしてくださいませんでした。
アレックス様は見届け人の前で愛を交わすのが苦手なようです。
これは、また少し離れ離れになった方がいいかもしれません。
「今築城しているところ以外は、予定通りの宿と休息所にするから、予定の遅れは取り戻せると思うんだ」
アレックス様は反省しておられるようですが、街道を完全に領地化するには、これくらいの城砦を一定間隔で築城するのは悪い事ではありません。
徒歩で半日の距離に同程度に城があるのなら、助け合って籠城する事も反撃する事もできますから、このまま砦町を造って欲しのですが、何と言えばいいのでしょう。
「恐れながらリークン公爵閣下、この砦町と同じ物をこれからも築城すべきだと献策させていただきます」
フェリシティがアレックス様に献策してくれます。
フェリシティが献策してくれるという事は、私の利益になるという事ですね。
私はアレックス様のためになると思ったのですが、違うのでしょうか。
どうせならアレックス様と私の共通利益になればいいのですが。
「何故だい、フェリシティ」
「それはクラリス殿下の領地にもなる街道を確保する為というのが1つの理由です。
もう1つの理由は、無駄な争いをしないためです。
これほど堅固な城が一定間隔にあれば、この国の愚かな貴族も街道に手出ししようとは思わないでしょう。
防御力が弱いように見せてしまうと、愚かな貴族が勘違いして攻め込んできてしまい、無理矢理徴兵された民が傷つくことになります。
何の罪もない民を死傷させないためにも、堅城は必要です」
フェリシティから理由を聞いたアレックス様が真剣に考えています。
フェリシティの献策は、アレックス様の貴族らしくない遠慮を押しのけるくらい魅力的な内容なのでしょう。
恥ずかしい言い方をすれば、アレックス様が何よりも大切にしている私の事と、私の次に大切にしている民の事を理由にしていますからね。
これではアレックス様も献策を退けられないでしょうね。
「そう言われると、必要だとは思うのだが、予定の遅れをどう取り戻すかだ。
できるだけ早く教会を叩かないと、何を仕掛けてくるか分からない。
それがクラリスの身を傷つけないとは断言できないのだ。
俺は全力でクラリスを護る心算だが、教会には長い歴史がある。
外部からはうかがい知れない力や魔道具があるかもしれない。
両立できる方法がないのなら、クラリスの安全を最優先したいのだ」
ああ、私はなんて幸せな女なのでしょう。
ここまで愛されるなんて、政略結婚しか許されない王侯貴族には望外の幸福です。
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