第82話:宿か砦か

 スライムに土や石や木を食べさせて、消化できる分は全部消化させるのだが、流石に短時間に全部消化して成長に回せるわけではない。

 むしろ大半の土や石や木は、道づくりのために取り除いたと言っていい。

 そんな取り除いた土と石と木を、宿や休憩所の建築材として利用する。

 間を開けた二重の型枠として大木を集め並べて、その間に土を入れてキングスライムの10000トン以上の体重を使って、圧縮強化するのだ。

 前世の中国で使われていた築城法の1つ、版築を応用したのだ。


 俺はクラリスと離れ離れになっている寂しさと不安を紛らわすために、女々しく頻繁に連絡を取らないように我慢するために、宿と休憩所を造る事に集中した。

 まずは版築の素材なのだが、単種の植物を食べさせたスライムをサクラに合体統合させているので、多くの素材を生成するスキルがあり、体内ではなく体外で混ぜる方法ではあるが、セメントを混ぜたコンクリートを作り出す事ができる。

 当然だが漆喰を作り出すこともできるのだが、他国で建材に使うのは技術流出につながる可能性もあるので、ティン国王と王都駐屯スライムを通じて相談した。


 ティン国王と相談する時に、サクラだから当然作れる焼きレンガについても相談したのだが、俺の領地になった街道ならば何をやっても構わないという返事をもらってしまった事で、むしろ慎重になってしまった。

 まあレンガなら大陸中で当たり前に使われているが、それをサクラが火魔法を使って大量生産できることが秘密なのだ。

 それはキングスライムのサクラだけではなく、王都や大魔境にいるロードスライムにも作れるし、莫大な容積でレンガを、いや、全ての物資を大量運搬できる事の方が軍事的には大きな問題なのだ。


 色々考えて、鉄筋や鉄骨を埋め込んだコンクリート建築ができる事は秘密にするが、本来は土と礫と少量の石灰と稲藁の混合物で作る版築の材料をコンクリートにして強度を増す事は断行した。

 火山土や軽石や焼成した粘土を砕いて粉末にしたモノを加えて水硬性セメントを作り、土と混ぜたのだ。

 しかも鉄骨や鉄筋の代わりに、竹を割って作った竹筋を最良の方法で組み入れ、竹筋コンクリート製の城壁をつくった。


 もう点々とした一軒家の宿や休憩所の規模ではなくなっていた。

 日本の宿場町や駅家のような、1つの町、いや街道を護り敵の通過を阻む砦のようなモノになってしまっていた。

 道の急峻さによって30kmから40kmの間隔を空けてつくる予定だが、徒歩の旅でも足弱な者も十分1日で歩ける間隔に宿場町、いや砦町を創り出していた。

 休憩所も同じ規模になってしまい、結局多少の差はあるが16km前後の間隔で砦町を築いてしまっていた。

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