第72話:ダンジョンコア

「おおおい、聞こえているか、ダンジョンコア。

 俺は今ここで狩りをさせてもらっているキングスライムの主人だ。

 この大ダンジョンのお陰で莫大な食糧を確保させてもらっている。

 お陰で多くのスライムを育てることができている、ありがとう。

 これからもずっと食糧を確保させてもらう心算なんだが、魔力は大丈夫か。

 もし魔力が足らないようなら、食糧のお礼に魔力を分けさせてもらう。

 警戒せずに本当の事を教えてくれないか。

 魔力の収支はちゃんと保てているのか。

 今ダンジョンコアに死なれたら俺達も困るんだ」


 俺は大ダンジョンにいると思われるダンジョンコアに話しかけた。

 とは言っても臆病なくらい慎重な性格だから、自分が大ダンジョンに入ったりはせず、サクラの声帯模写を使ってダンジョン中に声を響かせてもらっている。

 もし大ダンジョンにダンジョンコアがいないのなら、とても恥ずかしい行為だ。

 それに、大ダンジョンにダンジョンコアがいたとしても、前世のラノベやアニメと違って知性がない可能性もある。


「信じていいのか、信じていいのなら魔力を分けてくれ。

 このままでは魔力が枯渇して死んでしまうか、魔獣の発現を中止しなければいけなくなる、それではそちらも困るのだな」


 有り難い事にダンジョンコアが直ぐに返事をしてくれた。

 本当に声をかけてよかった、このままだったら魔獣の発現を中止されていた。

 ここで大ダンジョンからの食糧供給が止まってしまったら、全ての計画が白紙になってしまう所だった。

 全てクラリスがゴブリンを活用する献策をしてくれたお陰だ。

 そうでなければダンジョンコアの魔力の事は後回しにしていたかもしれない。

 いや、流石にそれはないな。

 臆病者の俺には、こんな大事な事を後回しにして遠征するような勇気はない。


「ああ、困るぞ、本当にとても困る。

 今からダンジョンコアが必要する魔力を渡すから、スライムの身体を通して受け取ってくれ、いいか」


「ああ、分かった、大丈夫だ、今から受け取らせてもらう。

 ただ俺が1度の受け取れる魔力量には限りがあるから、少しずつ分けてくれ」


 俺が1度に大量の魔力を送り込んで、ダンジョンコアの魔核や魔力回路を破壊することを恐れているのか、随分と慎重に魔力を受け取っている。

 これだと時間がかかってしまうが、俺としても想像以上の魔力を1度に奪われる心配がなくなるので、安心できる方法だ。


 だがダンジョンコアが備蓄しておける魔力量が分からないのは不安だ。

 今手に入れているのと同じくらいの食糧用魔獣を、常時確保しておきたい。

 今まで創り出した事はないが、サクラが持っている魔核に匹敵するくらいの、莫大な魔力を蓄えておける魔宝石を試作してみようかな。

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