第71話:ゴブリン活用法
クラリスが俺に提案してくれた策は、俺には思いつくことができなかった、とても素晴らしい策だった。
この策を実施すれば、ほぼ間違いなくどの国も、何の文句を言わずに国内の通過を認めてくれるだろう。
敬虔な教会の信徒も、よほどの狂信者でなければ謀叛になど参加しなくなる。
それくらいインパクトの強い策だった。
具体的にどうするかと言えば、今現在俺が訓練用に確保している、キングゴブリン1頭、ロードゴブリン9頭、ヒュージゴブリン21頭、ビックゴブリン954頭をサクラの先鋒として進軍させるのだ。
山を見上げるように巨大なサクラはとても圧迫感がある存在なのだが、どうしてもその可愛らしさが出てしまうのだ。
人間を本能的に恐れさせるという意味では、醜悪な容貌をもつゴブリンには遥かに及ばないのだ。
だから醜悪なうえに強大なキングゴブリンやロードゴブリンを先鋒として、人間に底知れない恐怖感を与えて、逆らう気力を打ち砕くのだ。
普通の人間だったら、キングゴブリンやロードゴブリンでなくても、ヒュージゴブリンやビックゴブリン程度が相手でも恐ろしくて身動きできなくなる。
しかもクラリスが考えた策はそれだけではなかった。
「アレックス様、大ダンジョンの魔獣を利用して、ゴブリンをホブゴブリンに、ホブゴブリンをビックゴブリンに進化させませんか。
大ダンジョンから無尽蔵に食糧が確保できるのでしたら、進化させたゴブリンを暴れさせる事無く管理して戦力化できます。
サクラより弱いゴブリンなら、従魔ほど思い通りには使えなくても、戦力にする程度の事はできるのではありませんか」
確かにクラリスが提案してくれる通りだった。
サクラの身体を足枷や首枷にしている限り、ゴブリンが勝手に暴れる事はない。
ただ前方を歩かせるだけで、示威行為としては最高の存在になる。
ゴブリンがいなくても戦いになればサクラの圧勝なのだが、戦闘になったという事実があると、相手国を無用に刺激してしまう可能性がある。
破れかぶれになった国が、国境線を超えて襲ってきたら、国境線近くの民が殺されてしまう可能性がある。
「よく献策してくれたね、クラリス。
クラリスのお陰で、余計な戦争を始めなくてすむよ。
まだどの国も国内通過を認める使者を送って来ていないけど、ゴブリン部隊を国境線に集結させたら、どの国も直ぐに通過を認めてくれるだろう。
本当にありがとうね、助かったよ、クラリス」
クラリスの献策には何の問題もない。
もし問題があるとしたら、クラリスの献策以前の大ダンジョンでの乱獲だ。
大ダンジョンのダンジョンコアの魔力の収支が大問題なのだ。
ダンジョンの魔獣はダンジョンコアが魔力で創り出しているモノだろう。
もしダンジョンコアが俺のように無尽蔵に魔力を創り出せる存在でなければ、一方的に奪うだけではいつかダンジョンコアの魔力が枯渇してしまう。
明日にでも直に話し合う必要がある。
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