第38話:イチャイチャ

 クラリス王太女殿下の言う事は事実で、ロードの進化までは誰が何を言ってこようとも、ここから動く気はない。

 ロードと人間の言葉で話ができるようになることが、俺の最大の目標なのだ。

 研究する事が楽しくて、寝食を忘れて熱中してしまう。

 クラリス王太女殿下とどちらが大事なんだという、野暮な質問は受け付けない。

 両立できるようにするのが男の甲斐性だと思う。


「ではこういたしましょう、王国騎士団とクラリス王太女殿下の私兵団を鍛えるために、ゴブリンとの実戦経験を積むために残ると国王陛下にお伝えください。

 同時に内々の事として、せっかく人質としている貴族連合の子弟を、このまま大魔境に隔離幽閉する理由として、ゴブリンの監視をやらせる事としましょう」


 俺は色々と考えた末に、国王陛下が認めてくれるであろう理由を捻り出した。

 王家としては、このまま有力貴族の子弟を人質にしておきたいはずだ。

 特にリークン公爵家のジェームスと、リークン公爵家の派閥に属する連中は絶対に解放したくないはずだ。

 ジェームスは俺の弟で、昨日会うまでは可愛いという感情があったのだが、あんな殺意の籠った視線を向けられると、完全に肉親の情がなくなってしまった。


「クラリス王太女殿下、アレックス様の申される通りでございます。

 このまま貴族連合軍の幹部を大魔境に閉じ込めることができれば、貴族達は王家に何も言えなくなります。

 更にアレックス様の強さを徹底的に見せつけることができれば、クラリス王太女殿下の御代は盤石となります。

 ここはアレックス様の提案通りになさるべきだと思います」


 クラリス王太女殿下の軍師役を務めているフェリシティが、手放しで俺の提案を賛成してくれた。


「ありがとうございます、アレックス様。

 アレックス様の提案が私の事を一番考えてくださっています。

 フェリシティも賛成してくれたことですし、このまま大魔境に留まります。

 国王陛下に急いで使者を送ってください」


 機嫌を直してくれたクラリス王太女殿下だが、その日から人目も憚らずに俺と密着しようとするのにはとても困った。

 俺にだって人並みに劣情くらいある。

 しかも猿並みの激しい劣情に襲われる思春期なのだから、本当に困った。

 だが劣情に流されて愛するクラリス王太女殿下の評判を落とすわけにはいかないので、乏しい自制心を総動員して我慢した。


「アレックス様、今日はどうなされますの」


「そうですね、レベルが8になったロードでは、ファイターキングゴブリンとの戦いでもあまり経験値が入らなくなっています。

 一度レベル3とレベル5のロードスライムに分離させてみて、以前のように戦うだけで効率よく経験値が貯まるのか試してみようと思います」


 そんな真面目な会話をしながらも、クラリス王太女殿下は腕に抱きついてくる。

 そんなに胸を押し付けられたら、真直ぐに立てなくなってしまう。

 

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