第32話:ファイターキングゴブリン奮戦

「ロード、ファイターロードゴブリンが残した盾と棍棒をを使うんだ」


 ロードとファイターキングゴブリンの戦闘は熾烈を極めた。

 ロードは、ファイターキングゴブリンが目にも止まらぬ速さで繰り出す棍棒の連撃を、身体の一部で受け流しているが、その度に少なくない体力を奪われる。

 減った体力は回復魔術で即座に元に戻し、回復魔術を使って減った魔力は俺が供給するので、負ける心配はないと思うのだが、問題はこの世界に会心の一撃やクリティカルヒットがあった場合だ。


 ロードが盾術と棒術のスキルを覚えていた事が本当によかった。

 今までロードが戦ってきた人間やファイター系のゴブリンの中には、盾術のスキルを持っている者や、棒術のスキルを持っている者もいたのだ。

 棒術の攻撃をわざと受け続けたり、身体の中に取り込んでから攻撃して盾術を使わせたりする事で、覚えられるスキルは全部覚えさせてきた成果だ。


「ロード、ファイターキングゴブリンの攻撃を盾で受け続けるんだ。

 無理に攻撃しなくても大丈夫だ」


 ロードが身体の一部で8本の手を作り、4つの盾と4つの棍棒を操っている。

 戦いに特化したファイターキングゴブリンであろうと、手は2本しかなく、ロードの攻撃を徐々に受けらるようになっていた。

 このままでも押し切って勝てるとは思うのだが、さっきから気になっている事があったので、それを確認したかったのだ。


 ロードの能力が、ファイターキングゴブリンを攻撃したり、ファイターキングゴブリンの攻撃を防いだりするだけで、少し上昇しているのだ。

 ファイターキングゴブリンを斃したわけでも食べたわけでもないのに、能力値が上昇するなんて画期的な事だ。

 ラノベやアニメでも、戦いの途中で強くなる主人公は多い。

 この世界の設定も、強敵と戦う事で経験値が増えて能力が上昇するようだ。


 それに、根本的な問題として、これからロードがドラゴンなどの強敵と戦う場合は、どうしても武器が必要になってくる。

 ロードほどの巨体では、丁度いい剣や槍を手に入れることは無理だ。

 だが棍棒なら、大魔境の巨大な魔樹を切り倒せば手に入る。

 それに、武術のレベルを考えても、人間の覚えている剣術や槍術のレベルよりも、ファイターキングゴブリンの覚えている棍棒術のレベルの方がはるかに高い。

 ファイターキングゴブリンの攻撃を受け続けることで、最高最強の棍棒術を覚えることができるかも知れないのだ。


「ロード、ファイターキングゴブリンを休ませるな、時々牽制攻撃を入れろ。

 それと逃がすんじゃない、ファイターキングゴブリンを捕まえて飼う心算で追い込むんだ」

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