第28話:愛の文通・クラリス王太女視点

「アレックス様からお手紙を預かっております」


 今日もアレックス様の手紙を伝令が持って来てくれます。

 最低での1日1通の手紙をやり取りしています。

 家臣達が愛の文通と陰で言っているようですが、その通りです。

 陰で何を言われようと関係ありません、私とアレックス様の愛は誰にも阻めない、相思相愛の関係なのです。


『いぜんにわたしたどくやくをつかって、ごぶりんをたおしてください。

 すうまんのごぶりんをたおせばめいせいをえられます。

 そのめいせいをあしがかりに、きぞくをおさえてください。

 このままではりーくんこうしゃくのめいせいだけがあがります』


 アレックス様は私の事を1番に考えてくださいます。

 ロードスライムの力を使えば、数万のゴブリンであろうと勝てるでしょう。

 それなのに私に手柄を立てさせようとしてくださいます。

 王配が目立ってはいけないと、手柄を立てないようにしてくださいます。

 最初にアレックス様を王配に選んだことだけは、リークン公爵に感謝します。


「フェリシティ、私の私兵はどれくらい集められますか」


「将来の取り立てを約束すれば、国内の傭兵団を全て集められます。

 冒険者も加えれば、2万人規模の兵を集められますが、少々時間が必要です。

 しかし相手がキングゴブリン率いる10万の大軍勢となると、レベルの低い連中は逃げ出してしまいます。

 戦闘の途中で逃げ出す者がいて、裏崩れから友崩れを起こしてしまうと、軍勢が壊滅する事もあり得ますから、数よりも質が大切になります。

 最初から相手がキングゴブリン率いる10万だと話して、更に参加する者の最低レベルを設定すべきです」


「それで何人集まりそうですか」


「2000人くらい、いえ、1200人前後です。

 彼らを投入する前に諸侯軍を動員いたしましょう。

 リークン公爵の手柄に触発されて、多くの諸侯軍が集まる事でしょう」


 軍師役のフェリシティはいつも的確な策を考えてくれます。

 非情な考えですが、リークン公爵を筆頭とする諸侯軍が惨敗した後で、私の私兵団が大勝すれば、私の名声は光り輝くことでしょう。

 その為に死んでいく諸侯軍の将兵は可哀想ですが、このまま放置すれば、もっと数を増やしたゴブリン軍に蹂躙されるという、どうしようもない現実があります。


「分かりました、急いで全ての準備をしてください。

 その際には、アレックス様から頂いた毒薬と回復薬を私の軍にだけ配ります。

 あれがあれば確実に勝てるとアレックス様が教えてくれました」


「はい、あれが使えるのでしたら、確実に勝てる事でしょう。

 あれの効果を知った傭兵や冒険者は死の恐怖が少なくなりますから、次からもっとレベルの低い傭兵や冒険者を使う事もできます」

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