第20話:スライム育成計画

 スライム城と呼んでもいい家を手に入れてから1カ月、公爵家から逃げ出してから7カ月、ロードは順調に成長してレベル2になっている。

 初めてロードに進化した時も嬉しかったが、レベル2になった時も感慨があった。

 でも残念ながら、レベル2になっても会話はできなかった。

 ほんの少しだけだが期待していた分失望もあった。


「魔獣や魔蟲を集めるのは問題ないかい」


 頻繁だったゴブリンの巣別れが行われなくなり、成長速度が遅くなってしまった。

 巣別れのゴブリン1000匹を何十回も斃せていた時には、驚くほど早くスライム達が成長できていたのに……

 心配なのはキングゴブリンに俺とロードの待ち伏せを知られてしまった場合だ。

 キングゴブリンのレベルが3以上だと、ロードでも危険かもしれない。


「ロード、危険だと感じたらゴブリンの集落から距離をとってくれ。

 安全を最優先して、直ぐに逃げられるようにしていてくれ。

 弱い個体でも索敵だと思ったら斃さずに逃げてくれ」


 ロードが承諾の感情を伝えてくれる。

 これがラノベやアニメなら一波乱あるのだろうが、俺は臆病者なのだ。

 危険があると分かっていて、不用意にゴブリンの集落に近づいたりしない。

 偵察に派遣されたゴブリンを斃して、キングゴブリンを警戒させたりもしない。

 危機察知の能力にたけたロードの本能を信じて、適度に距離を開けておく。

 ようやく色々と分かって来たのに、迂闊な行動で死ぬなど愚かすぎる。


「ロードがビック達でも勝てると感じた魔獣や魔蟲は、ビック達に斃させてくれ。

 ロードは強敵だけを選んで斃してくれ」


 ロードから喜びの混じった承諾の感情を伝えてくれる。

 自分は斃すだけでほとんど食べられなくても、一度合体統合した個体が成長するのが嬉しいのだろう。

 本当に危険になったら、またビック達と合体統合するのが分かっているのかもしれない、ロードは本当に賢い子だ。

 高レベルのスライムだった子達が、実験の結果ビックスライムに成長してくれた。

 1匹だけではなく276匹ものスライムが、合体統合ではなく敵を斃して経験値を稼ぐことで進化してくれた。


 しかも進化したビックスライム10匹が合体統合することで、ヒュージスライムに進化する事も、進化した後でも元のビックスライムに分離できる事も分かった。

 このまま順調にレベルを上げてくれれば、9匹や8匹でヒュージスライムに進化する事ができるかも確認できるだろう。

 経験値を稼ぐことができる魔獣がいて、ベビーをスライムにまで成長させることができる食料がある場所なら、スライムは幾らでも成長進化することができるだろう。

 ロードを次の段階に進化をさせることができた時、俺はリークン公爵家に戻る。

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