第18話:理想のお家

 公爵家を追い出されてから半年、ようやく理想の家を手に入れることができた。

 ロードスライムの身体で作った広大な家の中に住んでいるのだ。

 防御力159万2617を超える攻撃を受けない限り、ロードスライムに傷1つつけることができないから、内部空間にいる者は安全なのだ。

 しかも回復魔術を覚えたので、少々のダメージは即座に治すことができる。

 回復魔術に使う魔力も、無限の魔力を持つ俺が供給すれば、尽きることがないから、まさに無敵のスライム城だ。


「ロード、今日もシャーマンビックゴブリンから魔術を覚えようか」


 ロードからは承諾の波動が感じられる。

 ロードはまだ話すことができないから、スライムが話す事ができるようになるのは、次の進化からかもしれないし、そのまた次の進化からかもしれない。

 スライムだから話せないとは思えないのだ。

 まだ俺は出会った事はないが、ゴブリンやコボルトでさえ、ある程度の進化をすれば人語を話す事ができると聞いている。

 あいつらにできてスライムにできないとは思いたくない。


「さてシャーマンビックゴブリン、今日も土魔術を使ってもらうぞ」


「〇✖▼△◇■□」


 シャーマンビックゴブリンとはいえ所詮はゴブリンで、毎回痛い目に合わないと魔術を使おうとしないのだから、真正の馬鹿である。

 回復魔術を使えて進化も1つ上の段階にいたプリーストヒュージゴブリンには、覚えている全ての回復魔術をロードの身体の中で使わせたのだ。

 時間はかかったが、お陰でプリーストヒュージゴブリンが覚えていた回復魔術は全部覚えることができた。

 俺もロードも、毎日反復して回復魔術を使う事で忘れないようにしている。


「ロード、少し痛い目にあわせてやってくれ」


「◎〇✖●✖▼△◇■□」


 痛い目に合って、ようやくやるくらいなら最初からやれよと言いたいが、ゴブリンだから愚かなのは仕方がないのかもしれない。

 以前に捕らえていたシャーマンビックゴブリンから覚えた魔術は、ロードと合体統合している1万3556匹のスライムが覚えてくれている。

 いやそれだけではない、一度合体統合して回復魔術と攻撃魔術と武術を覚えてから、ビックスライムに進化するためにゴブリンと戦い続けている高位スライムも、分裂のために分離しているスライムも覚えている。


 分離しているスライムや、成長中のベビースライムやリトルスライムが全部成長してくれたら、もう直ぐロードスライム2匹分になるだろう。

 もちろん俺はロードを2匹に分離するつもりはない。

 最低能力が2000000を超えるロードスライムなら、敵のキングゴブリンがレベル1なら勝てると思うのだ。

 20000ものスライムが一斉に攻撃魔術を使っても、シャーマンビックゴブリンから覚えた程度の魔術では意味がない。

 だけど、20000ものスライムが、プリーストヒュージゴブリンから覚えた回復魔術を自分に使ったら、負ける事などないと思う。

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